『ザ選挙』編集長 高橋茂
9月29日付日経新聞発表の世論調査によると、共産党が前月に比べて2ポイント増の6%と自民党の55%に次いで2位に浮上した。民主党は2ポイント減の5%で結党以来最低を更新、日本維新の会も1ポイント減の3%と他の政党とともに軒並み支持率を下げ、共産党の好調さが浮き彫りになった。
共産党の好調さは民主党の凋落と対照的だ。今年、ネット選挙解禁が決まったことでさらに勢いづいたようにも見える。今年の春頃にネット選挙の取材で各党を調べていたとき、共産党の変化がとても興味深かった。「これはいつか現場を見たい」と思っていたところ、Facebookのつながりで現場を見せていただけることになったので、9月27日、共産党本部に行ってきた。
場所は宣伝局のフロア内。特に専用のスタジオがあるわけではない。これは喫茶店の一角を改造して即席スタジオを作った自民党にも通じる。箱物にお金をかけるのではなく、コンテンツに手間をかけるということだろう。機材もシンプルだ。カメラだけは業務用のものを使用しているが1台のみ。オーディオミキサーはアナログのローコストモデルで、モニターも普通のテレビを利用して3台。マイクはゲスト用のスタンド2台とピンマイク2つ。
9月27日の共産党ライブ放送「とことん共産党」は、「どうする? 原発汚染水」をテーマに、司会の朝岡晶子さんとレギュラーの小池晃副委員長・参院議員に加えて、三木利博赤旗社会部記者と熊谷智党福島県議団事務局次長が加わり、いつもより若干緊張気味にも見えた。
番組開始前には、出演者全員とスタッフが段取りの打ち合わせを行う。詳細な台本ではなく、簡単な進行表のようなもので打ち合わせするらしい。セリフもすべてアドリブだ。
放送はニコニコ生放送を使用するため、当然ではあるがさまざまなコメントが流れることになる。驚いたことに小池氏はリアルタイムで確認しながらいくつかを拾ってコメントを返している。この日のゲストの熊谷氏もコメントを拾おうと気を使っていた。
番組が終わってから少しだけ話を伺った。
「かなり辛辣なコメントもあるかと思うんですが、心が折れそうなことがあるんじゃないですか」と聞くと、小池氏はこう答えた。
「悪意のものもあるけど、それは何か『聞いて欲しい』という気持ちの現れだと思うんですよね。コミュニケーションを求めていると思うんですよ」
テレビよりもリラックスして臨むことによって、よりコメントにも向き合う姿勢が生まれるようだ。夏にはピンクのTシャツを着るなど、普段の姿との気持ちの切り替えを意識しているのか聞いたところ、「普段もこんな感じですよ」と笑って答えた。
司会の朝岡晶子さんは「最初はコメントにビックリしましたけど、いろんなコメントを含めて一緒に作っているんだと思ってから、緊張も無くなっていきました」
「共産党に文句があると言っても1時間付き合ってくれるわけですから、一緒に作っているという感じなんですよね」
と答えた。この前向きな姿勢がそのまま視聴者に届いているのではないかと感じた。
このような共産党の変化がすんなりいったとは想像しがたい。多くの人には共産党は歴史もあり、組織が固く、どちらかと言うと変化を受け入れられないのではないかというイメージが有るように思える。
その疑問を田村一志宣伝局次長にぶつけてみたところ、
「確かにキャラクターを使ったり派手になることへの抵抗は一部にありました。しかし、党全体というより一部ですし、ネット選挙への対応も検討しなければならないということで、意外とスムーズにいきました」とのことだった。
各政党を見ていると、「我が党の広報をこう変えていかなければならない」と考えている議員や広報担当者が必ず存在する。それと同時に今までと異なることをやりたがらない人も多い。これは政治に限らずどの組織にも当てはまることだ。そのとき、担当議員と広報・宣伝部署が二人三脚で進めていかれれば良いのだが、どちらかがブレーキになったり足並みが揃わないと、ピントはずれのことをやったり、付け焼き刃で終わってしまうことになる。共産党は、この二人三脚が上手くいった例なのではないかと感じた。それが支持率にそのままつながっていったかどうかはわからないが、決して無関係ではないはずだ。
共産党の取り組み、特にこの「姿勢」は、他の政党も参考になるはずだ。「組織を変える」という点では企業にも応用出来るかもしれない。やるとなったら「とことん」やる。番組を作っているスタッフみんなの表情が明るいのも強く印象に残った。
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