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【ザ選挙対談 Vol.6】半蔵門茶房 映画『立候補』(監督: 藤岡利充、製作総指揮・撮影: 木野内哲也)

2014/10/6

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政治や選挙にビジネスや社会事業などで関わっている方々をお呼びして、その背景や選挙に関するお話を伺う『ザ選挙対談』。

第6回目は映画『立候補』の藤岡利充監督と、製作総指揮&撮影の木野内哲也さんをお迎えしました。
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藤岡利充プロフィール
1976年山口県出身
2005年、「フジヤマにミサイル」で映画監督デビュー
2013年、泡沫候補の戦いを描いた「映画『立候補』」で毎日コンクールドキュメンタリー賞受賞。

木野内哲也プロフィール
1971年東京都出身
Massachusetts College of Art, San Francisco Art Institute 映画学科卒
2005年「フジヤマにミサイル」藤岡利充監督作品で撮影を担当。以後、多くの藤岡作品に携わる。

映画「立候補」公式HP:http://ritsukouho.com/
『立候補』予告編

■ この映画を撮ろうと思ったきっかけ

(藤岡)もともとは、別に泡沫候補だけじゃなかったんですよ。「夢追い人」ってタイトルで、夢みたいな馬鹿みたいなことを追っかけてる人を見つめるという、インタビューしに行くという、インターネットの投稿企画で自主的にやる、ぐらいで考えていたんです。自分自身が全く映像とは関係ない仕事をしていたので、本当は映画がいいとは思ってたんですけど、なかなか仕事をしながらだと難しいので、やるなら趣味でやるしかないなと。そのとき「夢追い人」って企画の中で、泡沫候補だけじゃなくてUFOがいるんだって言ってる方とか、徳川埋蔵金があるんだって言って家ぶっ壊しちゃった方とか、そういった方に会いにいって一体何のためにそれをやってるのか、まず本当にそれを信じているのかとか、もしくは、もし信じていないならなんのためにやるのか、他に目的があとしたらそれは何なのかを調べに行くっていう企画だったんですね。
その中で一番気になっていたのが、外山恒一さん。今は山口県に住んでるんですけど、昔は東京で働いてまして、ちょうどそのときに外山恒一さんの政見放送をリアルタイムで観ていたので、気にはなってたんですよ。そのときは取材とかはしなかったんですけど。調べたら博多にいるってことだったので、山口と博多は近いので最初にアプローチしたら外山さんがOK出してくれました。それだったら、インターネットに投稿するなら、政見放送で有名な人を他にも何人かと思い、誰がいるか調べたときにマックさんがはじめて浮上したんです。

■ 外山恒一さんに会ってみて

(藤岡)会って最初一番思ったのは、怖くないな..と。怖くない人だろうなと思いました。だって政府転覆ぐらいの人ですから(笑)最初はドキドキしながら…刺されるんじゃないかと…下手したら殴り掛かられるんじゃないかと…思ったんですけど(笑)会ってみるとそういう人じゃなくて普通の人でしたね。

■ 「製作総指揮」について

(木野内)大きな映画って必ずプロデューサーとかいる構成になってるんですけど、映画『立候補』って監督がいて僕がいるっていう2人だけなんですよ。製作総指揮っていった方が見栄えがいいっていうぐらいの話で…
(藤岡)だから、「スマイル党総裁」とおんなじ感じ。
(木野内)そうそう(笑)、基本は藤岡くんがこういうのやりたいんだけど手伝ってくれないかっていうのを手伝ってる…。実際撮りはじめて、こういう部分が面白いねってそうこうしているうちに出来上がっていく。だから最初は藤岡監督がこういうのやりたいっていっていうのをサポートする位置づけですね。あと撮影も僕ってなってますけど、映画の半分くらいは監督自身もカメラ回してます。
(藤岡)やっぱり選挙期間中ずっと密着ってやっぱりできないんで、木野内さんもそのときは他の仕事もありましたし。俺は3週間くらい仕事休んで密着しましたね。

■ 数学的には意味のないことをしている

(高橋)告示のくじを引くシーン、映像で初めて観て、そこから引き込まれていきました。
(木野内)告示のときって2回くじ引くんですよね。まずくじを引く順番を決めて、そのあと届出順を決める。俺数学わかんないんですけど、藤岡くんがあれ全然意味ないんだよって(藤岡)意味ないって、これはルールなのかと選管にも聞いたところ「慣例です」って。
(木野内)1回しかやらないところもあるの?
(藤岡)ないって。全国2回。たぶん、イカサマ防止です。くじを引く順番もその場で決まるからイカサマできないって。

■ 「映画を撮る」って、選管は知っていたのか

(藤岡)(撮影許可を取るとき、)「映画」とは言わなかったですね..そのときはフリーランスのジャーナリストって言ってました。まあ本当は…どフリーなんですけど…(笑)告示のシーンは2人で撮りました。重要なシーンはもちろん木野内さん来てもらって。

■ マック赤坂の息子、健太郎氏の心情の変化に感動した

(藤岡)葛藤がずっとあるんだと思いますよ。インタビューと最後のシーンは実は同じ日なんです。その1週間くらい前に『立候補』の完成披露試写会っていうのを無料でやってたんですけど、そのときに初めて息子さんが来られて、息子さんにインタビューを申し込んで撮ったんです。
(木野内)会わせてもらえなかったんですよ。マックさんも自分自身のことは比較的オープンな人なんですけど、家族のこととかになるとちょっとそういうわけにはいかなくて…何度かアプローチはしていたんですけどね。なかなかそういう機会がなくて。それで完成披露試写会って銘打ってやったときに健太郎さんも来てて、藤岡さんがマイクで振ったんですよ。「今日は息子さんもいらっしゃっていて」って。マイクを渡したら結構喜んでたんです。今まで、ここまで自分のお父さんのことを肯定的に描こうってやった人はいなかったし、観れてよかったって、結構喋ってくれたんです。それで終わった後に藤岡くんがインタビュー申し込んで実現しました。それがちょうど東京都知事の選挙戦最終日で。インタビューの後マックさんに取材にこいって呼ばれてるんですけど健太郎さんも行きますか?ってきいたら、じゃあ行ってみましょうとなって、行ったらああなったっていう。
(高橋)それがわかって映画を観たら、また違う感じになるかもしれませんね。マック赤坂の秘書、櫻井さんの心の動きも見えるじゃないですか。やっぱりこういう泡沫候補って本人ばかりが注目されるけど、周りの人の心情が見えるのは映画ならではですね。

■ 父は町議会議員だった

(木野内)(周りの人の心情が見えるのは)藤岡監督の構成の仕方、キャラクターの肉付けの仕方なんじゃないかなって。
(藤岡)僕の父がずっと町議会議員やってたんですよ。だから、生まれたときからずっと選挙には慣れ親しんでますし、そういうときにやっぱり家族で必ず議論があるんです、出るのかでないのかって。必ず母は嫌がるんです。なんの特にもならないから。電柱に向かってでも挨拶するような感じになるから。親父は、政治家になった人って、通れば役場の議会で偉い顔ができるわけなんですけど、母は後援会の人とかにずっとペコペコしてないといけないんですよ。それは他の大きな政治家も全部一緒で。だから必ず周辺部の人は迷惑被るような状態になってるんですね。そういうのずっと見てたからかもしれないです。

■ 必ず誰かに当てはまる

(藤岡)ここに出てくる人たちっていわゆる泡沫候補ということで、いろんな泡沫候補の戦い方をある程度網羅したかなっていうのはありますね。自分自身も有名な監督や組織でもないですし、泡沫監督として自分がどう戦ったらいいんだと考えたときに、自分の戦い方が必ず誰かに当てはまる..。例えば引きこもって、周りは関係ないと自分の中だけで解決しようとする手もありますし、マックさんみたいに派手なことやってみるとか、いろんな戦い方があると思うんですけど、自分はどれに当てはまってどういう戦い方をしたらいいんだという考え方を与えてもらった気がします。

■ ネット選挙の必要性

(藤岡)地方の選挙って、町ならその町の人が知っておけばいいんじゃないかなって思います。町の広報とかありますから…あと僕が思うのは、やっぱりまず直接会わなきゃいけない、会話をする…。それが無理なところ、都会だったら無理だからインターネットっていうのはすごいわかるんですけど。でも基本的には都会であろうとなかろうと、そういう風に関わって入れる入れないって考えるのがベストな方法じゃないかなって思うんですよね。
(高橋)うちは全国の選挙ってデータベースやってますけど、本当はその自治体のHPにちゃんと情報が載っていればいいんですよね。でも実際は自治体が小さくなるにつれなんにも情報が載ってないことも多いから、だったらここを見れば間違いないっていうサイトがあるといい、という概念もひとつあるので、ナントカ村の選挙を全国の人にみてほしい、というのだけが目的という訳ではないんです。
(藤岡)…実際、僕も選挙調べるとき「ザ選挙」はかなり見ました(笑) 〜中略〜 まあ本気でその自治体の情報知りたいんだったら図書館にいけばいいんですよ。図書館に問い合わせれば郵送もしてくれると思いますし。(情報集めは自力で)できないこともない…。

■ 野々村議員にみる泡沫候補の原点、「世の中を変えたい」

(藤岡)野々村議員でしたっけ…あの会見をみたときに、まさしく泡沫候補の原点をみた気がしたんですよね。「世の中を変えたい」とかいうのって、結局なんでこんなしょうもないことに引っかかっちゃったんだっていう自分に対する怒りが込み上げてきて、じゃあ元々の原点はなんだってときに、「世の中を変えたい」とか「今の政治はよくない」っていうふうなネガティブな発想から出てきてる。だから普通とは違って組織を持たないし…なぜなら既成政党はだめだと思ってるから。補末候補として出てきてる人たちも、基本的には「今の政治はよくない」という発想のもとに出てきてる人たちなんですよね。それは最後のギリギリまで気がつかなかったんですけど。結局政治の舞台に出る人たちっていうのは、やっぱり政治に何らかの思いがある。その多くはやっぱり政治に対しての不満がある。本当は既成政党に入ればそっちの方が早いわけじゃないですか。入らなくても通る人ってタレントくらいだけど、タレントでも組織にサポートしてもらわないと通らない場合も多い…。
(高橋)野々村議員は本当は維新に入りたかったんだと思います。彼は県議になる前に他の選挙にいくつも出ていて全部最下位で落ちてる、それこそ泡沫だったんですけど、自分でコピーに「維新」って入れちゃったから入れた人の何人かは維新の会と勘違いして投票して、ギリギリ当選したんじゃないかっていう感じかなぁ。
(藤岡)例えば野々村議員に入れた人も1%でも本人に直接会っていたら、本人も変わっていたと思うんですよ。「俺はお前に入れたぞ」「俺はお前を見てるぞ」って言われたら、また行動も変わったと思うんですけど、そういうのがなかったんじゃないですか。何人入れたかわかりませんけど。もし維新と勘違いして入れたとしたら、よっぽど適当に入れたんですね。

(木野内)テレビで散々彼が泣いてるシーンとか全国で報道されてますけど、関係ないじゃないですか、あそこの選挙区の何万人かが直接関係あることであって。その人たちが、我々が選んでしまったってことで何かするのはいいですけど、99%の人が直接関係ないのにただ面白がって騒ぎ立てるのは、それはさらに残念が残念を呼んでいるような…
(藤岡)でもあれは…ちょっと笑っちゃいましたけど(笑)、でもあれは本当泡沫候補の原型をみたような気がしたし、落選4回してるっていう負債…気持ちが負債があるってなっちゃってるから、どうやって回収するかっていうのになっちゃいましたね。
(木野内)それって精神的な構造を変えちゃうと思うんですよね、落選し続けたりとかすると。いくらやってもなかなか突破できない。そこの分析をけっこう藤岡さんとしたりしたんですけど、マックさんとかも、なんでエンジェルになっちゃったりスーパーマンになっちゃたりするのか。結局会話が成立しない以上はなにかしら突飛な格好したり言動をもとに注目を浴びるしか、すがるものがなくなっちゃうっていう中での結果なんだなっていう…。人間、結局一番ベーシックなコミュニケーションをどこかで断たれてしまうと、ああいう形になってしまう、現状世の中がそうなってきてるようにみえてしまう。もしかしたら映画「立候補」の存在価値みたいなのはそこにあったのかなってちょっと思います。

■ ネット選挙解禁から1年。ネットの可能性は?

(木野内)選挙に限らずなんですけど、ネットっていうコミュニケーションが普及して大体20年過渡期をみてきて、ネガティブな部分も増幅しやすいですけど、長所としてベースの生活であったりベースのコミュニケーションがあってプラスアルファそこに乗っかってくるっていうのは非常に強い部分で、そこは変わらないはずなんですよ。ベースがありさえすれば、リアルで会って話せばこの人間違いないなっていうのはわかるはずなので、そこで上澄みのネガティブな部分をいくらネットで騒がれようが関係ない。人間と人間のコミュニケーションがベースにあるんだから。
(高橋)プロモーションという面においてもそうですけど、電話やメールに変わる連絡手段としても、覚えておけばそれはひとつの武器になりますよね。
(藤岡)調べ物には最高ですよね。会う前に、前もって情報を仕入れてからいくようにしてました。マックさんへのアプローチも最初はネットでしたし。
(高橋)マックさんは映画の中でもTwitterみたりしてましたよね。アーカイブとしてもそうだし、検索とか連絡手段としてもいろんな側面の特徴があるので、それがうまくハマっていけば、もっと変わっていくのかもしれないですね。
選挙戦に密着し“現場”を体感したお二人との対談は2時間近くにわたり、とても深く濃い内容のものとなりました。必ずしもネット選挙に肯定的ではない考え方に、話していて改めて気付かされることも多かった今回の対談。続きは動画でお楽しみください。

高橋の感想は『ザ選挙サロン』で。
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映画「立候補」 [DVD]
マック赤坂 (出演), 羽柴誠三秀吉 (出演),
藤岡利充 (監督)

泡沫候補: 彼らはなぜ立候補するのか
(ポプラ新書)
藤岡 利充 (著)

 

 (文:伏見十二)

 

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