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【選挙の眼】小渕・松島辞任で問われるのはメディアの多様性か

2014/10/20

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『ザ選挙』編集長 高橋茂

■報道されないこと

秋らしく清々しい月曜日は、ドロドロした政界の辞任騒動で幕を開けた。

小渕優子経産相

小渕優子経産相

関連する政治団体で不透明な資金処理があった問題で、小渕優子経済産業相が辞任を表明。これに続いて、選挙区内で「うちわ」を配った松島みどり法相も辞任の意向を示しているという。

ネットでの反応を見ると、「そんなくだらないことで時間を潰さないで、もっとやることがあるだろう」という意見をしばしば見かける。確かにそのとおりであるが、実は「もっとやること」はやっているのである。「うちわ問題」ばかりがクローズアップされた蓮舫参議院議員の質問のメインは、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)の、国立競技場解体工事入札における談合疑惑であった。しかし、それを取り上げたのは、読売新聞などの一部メディアであり、それも気をつけて読まないとわからない程度の扱いであった。まっとうなメディアとして復活しなければならない朝日新聞は、10月1日に「国立競技場解体工事、入札やり直し」のニュースを掲載しながら、この質問に関してはスルーしていた。

松島みどり法相

松島みどり法相

一部の国民からすると、くだらないことで国会審議を停滞させているように見えるが、第二次安倍政権になってから、失言程度で閣僚辞任まで叩かれることは無くなったように見える。石原元環境大臣の「金目発言」だ。民主党政権時の鉢呂経産相を「死のまち」発言で辞任に追い込み、辞任会見では記者(時事通信の記者であったことが分かった)が質問ではなく罵倒までしていたのに、石原「金目発言」では追求は無く、謝罪のシーンを表層的に報じて曖昧にしてしまった。

■公選法は厳格に適用されてこそ民主主義国家

失言の追求をしろという話ではなく、それぞれのメディアの方針として、しっかりした基準があれば良いのだが、どうしてもそのようには思えないのだ。その場その場での「空気」「上の意向」「視聴率」「販売部数」「巷の評判」を、低度な現場レベルと芯のないデスクサイドで判断していき、メディアの総意として、「なんとなく」取り上げられるニュースが決定していく。

今回の小渕大臣、松島大臣の辞任問題は、失言とは異なり、公選法、政治資金規正法違反に関わる重大な「事件」である。政府与党としては早い幕引きを狙い、大臣辞任で早急にケリを付けたいわけだが、以前有権者に線香セットを送り公民権停止になった衆議院議員(前防衛大臣)がいれば、選挙期間中にポスター貼りをした大学生に報酬を配って連座制が適用され、職を失った参議院議員もいた(その後復帰せず)。公選法は厳格に適用されることにより、日本は民主主義国家だと言えるのである。その時その時の政権の力や、警察のさじ加減で恣意的に運用されてはたまらない。ましてや政局や党内の力関係で足の引っ張り合いになるのであれば、何のための法律か。

小渕・松島辞任で、メディアは「安倍政権の岐路」「安倍政権に打撃」と報じ、永田町は大騒ぎだ。この場合、辞任によって国民の感心が薄れ、世論調査を行って期待ほど下がらなければ、それで終わる。司法に動きが出てきたり、意外と支持率の落ち込みが大きければ、「政局か!」と更にざわめきたつ。すべてのメディアが、だ。

■流される「事件」そして報道の「自動化」で考えるメディアの「差異」とは

繰り返し言うが、これは「事件」なのだ。政局を報じるなとは言わない。しかし思い出して欲しい。ここ1年ほどでも、徳洲会問題、号泣県議、青森県平川市議の大量逮捕と大きな問題が続き、「公選法 違反」で検索すると2週間前までは地方で行われた選挙での違反が、いくつもニュースとなって表示されていた。徳洲会問題は結局どうなったのか。号泣県議は辞任したが、政務活動費の使途に動きは出てきたのか。「津軽選挙」は無くなったのか。

実は、ニュースを丹念に見ていくと、全く報じられなくなったわけではなく、動きがあればそれなりに報道は行われている。ニュースを受け取る側にもリテラシーや行動が求められるのは当然のことだ。

表面的なことを撫でているだけでは、政治家のあら探しが続き、「当局」によってリークされる情報を書きたて、一人が失脚すれば次を探すという「ジャーナリズム的なもの」が永遠に続くことになる。それであれば、5年後には報道が「自動化」され、現場の記者は要らなくなる可能性も出てくるのではないだろうか。

読売新聞と朝日新聞と毎日新聞と産経新聞の違いは何か。同じニュースを右側から見るか左側から見るかの違いだけなのか。それでは、結局「同じ事件」を「同じニュース」として流しているだけに過ぎず、一つのニュースを立体的に俯瞰できるメディアが現れれば、それ一つで済んでしまう話なのだ。「同じ事件」を扱うこともあるだろう。しかし、「問題は解決していない」と判断する社があれば、その先は自然と内容が分かれていくはずである。多くのメディアが政府寄りの報道を続ける中、「公選法」「政治資金規正法」に喰らいつき、また「女性の有効活用とは何だったのか」などの視点で掘り下げ続けるメディアがあることを期待したい。ネットメディアでは、すでに現れているのだが。

 

筆者:高橋茂
『ザ選挙』編集長。電子楽器のエンジニアから2000年の長野県知事選挙を経て、政治家の情報発信の専門家となり現在に至る。株式会社VoiceJapan代表取締役、株式会社世論社代表取締役。武蔵大学社会学部非常勤講師。政治家やNPOなどの活動サポートの傍ら執筆、講演など活動は多岐にわたる。
現在、Facebook上にて会員制オンラインサロン『ザ選挙サロン』を運営している。

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