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【選挙の目】18歳選挙権の本質は「はじめての選挙」にある

2015/2/19

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『ザ選挙』編集長 高橋茂

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昨年のAct18 第1回シンポジウム

自民、民主、公明、維新などの与野党が、現在の「二十歳以上」の選挙権年齢を「十八歳以上」に引き下げる公選法改正案を衆議院に再提出する方針を固めたことにより、今国会で成立すれば来年の参院選から「18歳選挙権」が実施される見通しだ。

『ザ選挙』では以前よりこの問題に注目し、成り行きを見守ってきた。
Act18 第1回シンポジウム〜若者×国会議員 18歳選挙権を実現しよう〜
http://go2senkyo.com/articles/2014/06/20/5818.html

18歳選挙権の実現に関しては、NPO法人「Rigths」が2000年から選挙権・被選挙権年齢の引き下げに向けて地道に活動を続けてきた。現在はさらに「TEEN’S RIGHT’S MOVEMENT」や、そこから派生した「Act18」といった団体や有志のグループが18歳選挙権実現に向けて活動を続けている。
(『ザ選挙』を運営する株式会社VoiceJapanも、「Act18」のサイトにサーバーを無償提供し活動を支援している)

NPO法人「Rights」
http://www.rights.or.jp/

「TEEN’S RIGHT’S MOVEMENT」
http://teensrights-movement.jp/

「Act18」
http://act18.jp/

■若者は選挙で正常な判断ができない?

選挙権年齢引き下げの目的として、若者の政治意識を高めることや、若者世代に向けた政策の充実を挙げることが多い。もちろんそれは重要なファクターである。

逆に懸念する意見も出されている。ほとんどは「社会のことを知らず、政治に感心の無い若者に正しい判断ができるのか」というものだ。

これに対して、私は「何と思い上がった考えだろう」と言いたい。それでは、現在の有権者はどの程度の「正しい判断」ができているというのか。特に高齢者に至っては、情報源がテレビ、新聞、ラジオ、雑誌などのいわゆる「マスメディア」に大きく偏る。そして選挙時に候補者を選ぶ情報としてはポスターぐらいしか無いのが現実だ。これではたして「正確な判断」を下せていると言えるのだろうか。

もう少し具体的に考えてみる。自分の住む自治体(A市とする)でA市議会議員選挙が行われたとする。その時の情報は何か。

街頭演説を見たり、チラシを受け取れる人は限られている。新聞の地元欄に掲載される情報もごくわずかだ。駅前で「選挙に行きましょう」とティッシュが配られることはあっても、なかなか立候補者の情報を詳しく見ることは出来ない。

結果として、ポスターのみが有力な候補者情報となるため、有権者は「あの人駅前でよく見かける」「たまたま握手してもらった」「知人から投票するように頼まれた」という理由で投票するのが多いのではないだろうか。事実、投票前にアンケートを取ると、投票に際して重要視している項目は「政策」がトップに来るのに、実際に選挙後に同じアンケートを取ると「人柄」がトップに来ることが多い。「政策」で候補者を選ぼうと思っても、その情報に接する機会が無いのだからしょうがない。

■18歳選挙権の本質は何なのか

現在の有権者が大した理由も無く候補者を選んでいる状況で、「若者は未熟だから選挙権年齢を引き下げるのは問題がある」とする意見ほど問題があるのは明らかだ。

では、選挙権年齢を引き下げれば、その問題が解決されるのか。答えは「否」である。18歳選挙権が実現したからといっていきなり候補者情報が潤沢に用意されるわけではない。従って、すぐに状況が大きく変わることは無いのだ。

18歳選挙権がもたらす最大のメリットは何か。

それは「初めての選挙が地元で行える可能性が高い」ことだ。

18歳と言えば、まだほとんどは高校3年生の年齢のため、住民票も地元にある。それが20歳になると大学・専門学校などへの進学や就職で地元を離れることも多くなり、住民票を移しておらず現住所で選挙が出来ないことも多い。まだ慣れない土地で行われる選挙に感心が向かないこともうなずける。

現在、参院選は3年ごとにあり、衆院選は任期は4年だが実際には平均して2年半程度で行われる。さらに知事選、市町村長選、議会選挙と、18歳になってから地元を離れるまでに選挙が行われる可能性は高い。

「初めての選挙」が地元で行えるメリットは計り知れない。地元であれば学校でも教師が呼びかけやすいし、親と一緒に投票に行くこともできる。そこで対話が生まれ関心が高まる可能性もある。親はマスメディアで情報を取得し、子どもはネットから情報を取る。そんな分担も面白い。

選挙権を持って初の選挙で投票できれば、その後の敷居は一気に低くなる。地元を離れて暮らす街で、「よくわからないし面倒だから投票に行かない」ということも減るだろう。

18歳選挙権がもたらす効果は、政治家側にも生まれるはずだ。投票率が低いと言っても新たに240万人の有権者が増えるのであれば、投票率が30%として72万人。決して無視できない数字となる。そうなると政策も若干若者向けにシフトせざるを得ない。若者にシフトするということは、日本の将来に向けた政策が増えるということだ。来年の収入より、10年後50年後の収入や幸福が議論される機会も増えるに違いない。



■ネット選挙と並行並行させて盛り上げよう

メリットが多い18歳選挙権だが、最初はメディアで盛んに報じられて国民的な関心も高まるために若干高めの投票率となるだろう。しかし、徐々に落ちていくことが考えられる。

それは、候補者の情報がたいして増えないからだ。今と同じような状況であれば、結局若者もポスターでしか選ぶことが出来ない。

そこで、若者は投票を諦めるのではなく、候補者にプレッシャーを与えて欲しい。それは簡単で良い。
「ホームページも持ってないの?」
「若者向けの政策はあるの?」
事務所があれば行って聞けば良いし、街頭演説を見かけたら直接聞くのも手だ。恥ずかしいかもしれないけど。地元のメリットを活かして、クラスの友達と候補者の比較表を作るのも面白い。もしそのようなものがあれば、『ザ選挙』でも積極的に掲載させていただく。
せっかくネット選挙運動が解禁になったのだ。「ふつうのコト」として候補者にネット活用を促していこう。

■学校教育の重要性と注意点

せっかくの18歳選挙権であるので、学校でも積極的に投票を呼びかけてもらいたい。この際注意すべきことは、教師が特定候補者に誘導してはいけないということだ。つい、教師が自分の考えを述べてしまうこともあるかもしれない。しかし、投票先が誘導されるようなことがあってはならない。

あくまでも、有権者が自分で考え、自分の意志で投票できるようにすべきであり、これは別に若者に限ったことではなく、むしろ大人の態度もこれからは問われると思わなければならない。いったい今まで自分は何を根拠に投票していたのだろうか、と。

若者の政治参加の意識が高まり、徐々に投票率も改善し、大人は自らの投票行動を見なおし、そして立候補者は有権者からより厳しい評価を受けるようになる。それが「18歳選挙権」に期待される効果なのだ。

筆者:高橋茂
『ザ選挙』編集長。電子楽器のエンジニアから2000年の長野県知事選挙を経て、政治家の情報発信の専門家となり現在に至る。株式会社VoiceJapan代表取締役、株式会社世論社代表取締役。武蔵大学社会学部非常勤講師。政治家やNPOなどの活動サポートの傍ら執筆、講演など活動は多岐にわたる。
現在、Facebook上にて会員制オンラインサロン『ザ選挙サロン』を運営している。

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