■”大阪らしさ”を象徴する選挙区にスキャンダルの影響は

大阪府吹田市。地名はピンと来なくても、「上西小百合衆議院議員の選挙区」と聞くと「ああ」と頷く人も多いのではないだろうか。誰が呼んだか「浪速のエリカ様」という愛称が付けられ、現在衆議院議員二期目。維新の党所属で活動していたが、大阪維新の会に続き、維新の党からも除名処分となった。

ことの詳細は他のニュースを見ていただくとして、現在その選挙区で大阪府議会議員選挙が行われており、吹田選挙区がなかなか興味深い構図となっている。

大阪府議会議員選挙（吹田選挙区）立候補者一覧

　定員４人のところに６人が立候補しており、政党で見ると自民、民主、公明、維新、共産そして無所属が１名となっている。このうち現職は民主、公明、維新の３人。前回（2011年）は、自民、民主、公明、共産、そして大阪維新の会の候補者が立候補し、大阪維新の会の杉江友介氏がトップで、なんと自民党候補が落選している。つまり、本来であれば自民党へ行く票も維新が取ってしまうほど維新支持層が多いと言える。

前回（2011年）の大阪府議会議員選挙吹田選挙区の結果

そこに持ってきて今回の騒動だ。さぞや維新は支持を落としていると思いきや、実は手元にある情勢調査資料を見ると、上西小百合議員のスキャンダルが発覚してからの方が大きく伸びている。

これはどういうことだろうか。ここからは推測だが、問題がおおやけになってすぐに大阪維新の会の橋下徹代表が上西氏と一緒に会見を開き、会見終了後素早く「除名」という処分を下したのが大きいと考えられる。そして維新の党も「除名」を決めたことから、被害を最小限に食い止めたと言えるのではないだろうか。そしてこれを裏付けるかのように、自民党候補の支持はあまり伸びていない。

■各政党が競い合う中、無所属候補も参戦

前回と異なるのは、無所属の神谷宗幣氏が出馬していることだ。実は、神谷氏は以前『ザ選挙』の企画で対談したことがある。元吹田市議会議員で、龍馬プロジェクトの代表を務めている。活動は大阪を飛び出して全国に及ぶが、ベースは大阪吹田にあり、今回の出馬も原点に戻るという意味合いもありそうだ。

■予想される結末は

さて、気になる結果予測だが、今回の統一地方選挙でも前回同様候補者全員当選を目指している公明党を始め、前回は２位以下が激戦だったため、当選者を予測するのは非常に難しい。票の流れを考えると、まずは前回ダントツのトップだった維新の杉江友介氏が得票を伸ばせるかどうか。除名されたとはいえ、議員辞職はせず、まだまだ出そうな上西議員の醜聞に対する批判票の行方がどうなるのか。公明党の三浦寿子氏は当選３回の現職ということもあり、安定した戦い方となるだろう。

前回（2011年）は野党だったが、2012年に政権を奪取した自民党の60歳新人候補豊田稔氏は、自民党支持者を固めることは出来ても、維新の党支持者や無党派層に食い込むのは厳しそうだ。共産党も新人、今回は47歳の女性候補、石川多枝氏を擁立してきている。

民主党は当選４回を誇る70歳の現職上野和明氏。前回は民主党政権下であるにもかかわらず最下位当選だったが、今回自民党政権であることは影響するのかどうか。

そして、保守系無所属で、おそらく支持者が維新や自民と被る神谷宗幣氏が杉江氏の36歳に次ぐ37歳の若さで、若者へのアピールを十分にして若者からの支持を得られるのか。

ある情勢調査によると、やはり維新の杉江氏が現在のところ頭ひとつ飛び出た状況となっており、続いて三浦（公明）、石川（共産）、上野（民主）の３人が熾烈な争いを繰り広げている。そして神谷（無所属）は５番手、豊田（自民）は６番手と厳しい戦いを強いられている。しかし、有権者の過半数がまだ投票先を決めていない。上位４人は政党推薦候補が占めるのか、それとも政党の支援を受けない無所属候補が一角に滑りこむのか。注目される選挙のひとつだ。

筆者：高橋茂
『ザ選挙』編集長。電子楽器のエンジニアから2000年の長野県知事選挙を経て、政治家の情報発信の専門家となり現在に至る。株式会社VoiceJapan代表取締役、株式会社世論社代表取締役。武蔵大学社会学部非常勤講師。政治家やNPOなどの活動サポートの傍ら執筆、講演など活動は多岐にわたる。
現在、Facebook上にて会員制オンラインサロン『ザ選挙サロン』を運営している。