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【選挙の目】「無投票選挙」を無くそう!実現可能?な2つの案

2015/4/26

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今回の統一地方選挙で、まず問題にとして取り上げられるべきは「無投票選挙」の多さだろう。

<3日に告示された41道府県議選は、総定数に占める無投票当選の比率が過去最高の21・9%に上り、香川では全41議席の約3分の2(65・9%)に当たる27議席が決定した。地方政治の「なり手不足」は深刻な状況を迎えている。>(産経ニュース:4月3日)

無投票だと候補者の政策を知る機会も減る

無投票だと候補者の政策を知る機会も減る

過去も、平成3年の無投票率が21.8%だったというので、とりわけ今回が多すぎるということではないが、前回よりも4ポイント増えているし、5人にひとりが選挙で選ばれていない状況は、決して良いものではない。

<市長選は前回2011年を12上回る27市で無投票当選が決まった。関東地方では茨城県日立市長選や埼玉県行田市長選など。現職が三選された群馬県館林市長選は、前半戦の県議選も無投票だった。市議選でも無投票当選者は246人と、前回の116人から倍増した。>(東京新聞:4月20日)

<統一地方選で21日告示された122町村長選と373町村議選は午後5時に届け出が締め切られ、総務省によると、町村長選は全体の43・4%に当たる53町村が無投票になった。町村議選(総定数4269)は89町村の930人が無投票で当選した。前回2011年から37人増え、総定数に占める割合は21・8%で、03年の23・3%に次ぐ高さとなった。>(共同通信:4月21日)

投票率の低下が問題視される中、無投票はそもそも投票率も出ない選挙になるわけで、ホッとする候補者もいる反面、有権者に政策を訴えることが出来ず、政治・行政への関心の低下を招き、長期的には「住みにくい街」になっていくおそれがある。

「無投票当選」は、表現を変えれば「全員当選」と言える。つまり、どんなに有害な人物が立候補していても、有権者は落とすことが出来ず、4年間は税金を報酬として払い続けることになる。また、得票数が出ないため、議員は自身への支持の大きさを実感することができない。たとえ100票であっても「自分の名前を投票用紙に記入してくれた人がいる」というのはその後のモチベーションに繋がるのだ。

定員よりも多い立候補者が出ることはもちろんだが、そもそも出たい人が定員数以下しかいないことが問題なので、いくら報酬を上げても根本的な解決にしかならない。

統一地方選:50歳以下は報酬アップ…それでも若手現れず(毎日新聞:4月21日)
<長崎県の五島列島北部の小値賀(おぢか)町。若手や女性の町政参加を促そうと今年、満50歳以下の議員に限り議員報酬を月額18万円から30万円に引き上げた。だが、定数8の議員選に立候補したのは9人で最年少は57歳。若手は現れなかった。>

要は、人参を鼻の先にぶら下げても速く走るどころか、「人参が食べたいからだろう」というレッテルが貼られてしまうことを馬は恐れるのだ。

では、どうしたら良いのか。

有権者が政治に関心を持ち、もっと立候補への敷居を低くすることも大切だが、ここでは別の案を二つ出してみたい。

1.定数を一つ減らして選挙を行う

通常、立候補者が定数に満たない場合は再選挙が行われるが、一人でも足りない場合はすべて選挙が行われるのではなく、定数の割合によって数人までは許されるケースがある。どうしてもその定数でなければいけないということではない。そもそも議員定数は地方自治法で上限が決められていたが、今ではその上限も撤廃され、極端な話「これくらい」というさじ加減で自治体ごとに決められるようなものだとも言える。

自治はどこへ:2015年統一選 北海道・浦幌町議選 欠員無投票、でも安堵 「再選挙は防げた」(毎日新聞:4月22日)
<「欠員による再選挙を防げただけでも良かった」。北海道浦幌(うらほろ)町議選は、定数11に対して立候補者が10人だけで、定数に満たないまま欠員無投票となったが、町議会関係者は安堵(あんど)の表情を浮かべた。公職選挙法の規定だと欠員2で再選挙となるためで、田村寛邦議長(68)らは「議会の存在意義が問われる」として、心当たりの町民に立候補を促してきた。>

また、告示直前に定数を減らして無投票・再選挙を免れたケースもある。小回りの効く議会ばかりではないが、立候補説明会後に定数を削減することは可能だ。

〈上野村議選〉駆け込み定数削減 10から8 再選挙回避 挙を免れた自治体もあった。(上毛新聞:4月10日)
<群馬県の上野村議選で、村議会は9日臨時会を開き、議員定数を現行の10から8に削減する議員発議の条例改正案を賛成多数で可決した。告示まで2週間を切っての駆け込み削減は異例だ。>

110255まずは「選挙は必ず行う」と決めてしまう。そして、定数10人のところに10人しか立候補しなかったら、その自治体にはその程度の人数でも多いということだから、定数を9に自動的に下げて選挙を強行する。

現在のところ、議員定数削減は議会の提案・可決が必要になり、自ら定数を下げるというのは議員はやりたくない人が多いので、実現は難しいが、制度として「必ず選挙は実行する」「定数に届かなかった場合は新しい定数を立候補者数マイナス1にする」と決めてしまえば良い話だ。

とはいえ、反対意見は当然多いだろう。だからこそ議論をしてもらいたい。そのための「議会」なのだ。

2.定数を超えなくても選挙は行う

定数10に対して10人しか立候補しなくても選挙を行う。法定得票数に満たなかった候補者は当選無効となる。有権者は候補者の政策を知ることができるし、「選択した」実感も生まれる。そして「知らない間に知らない人が議員となっていた」事態を避ける事ができる。

基本的には全員当選となるため、消化試合的な空気が流れて当然投票率は下がる。そこで当選は「参考」とし、議員には氏名の後に(仮)と付ける。「選挙太郎市議会議員(仮)」と4年間は呼ばれることになる。

以上、2つの案を示してみた。「荒唐無稽」と一笑に付される可能性が高いが、それでも「無投票が2回続いたら強制的に定数削減」といった対策は必要だ。また、今回の結果や今後の人口推移を鑑みた上で、これからの4年間の間に全国的な定数見直しを行わなければならない。

これからの4年間でも毎週全国のどこかで選挙が行われる。無投票選挙の問題は今回急に出てきたものではなく、ここ最近ずっと言われてきた。秋には岩手・宮城・福島で統一地方選挙が行われ、震災復興が厳しく問われることになる。そんなときに「無投票でした」とならないように、今から対策を検討すべきだ。



筆者:高橋茂
『ザ選挙』編集長。電子楽器のエンジニアから2000年の長野県知事選挙を経て、政治家の情報発信の専門家となり現在に至る。株式会社VoiceJapan代表取締役、株式会社世論社代表取締役。武蔵大学社会学部非常勤講師。政治家やNPOなどの活動サポートの傍ら執筆、講演など活動は多岐にわたる。
現在、Facebook上にて会員制オンラインサロン『ザ選挙サロン』を運営している。

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