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18歳選挙権 若者は投票に行かれない

2015/6/6

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決定的に欠けているのは候補者掲載情報の標準化だ

6月4日、衆院本会議にて選挙権が得られる年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法の改正案が全会一致で可決され、参議院に送られた。参議院にて17日にも成立する運びで、昭和20年に「20歳以上」となった選挙権年齢引き下げ以来、70年ぶりの改革となる。これによって新たにおよそ240万人の有権者が誕生することとなった。

国会では選挙権年齢引き下げにもとづき、政治教育の重要性が課題となり、文科省では高校の学習指導要領を見直し、新たな科目を創設することなどを検討しているそうだ。20歳未満の学生を対象にした模擬投票も各地で行われている。各政党は、新たな240万人の有権者獲得に乗り出していて、インターネットを使った情報発信にも積極的に取り組み始めている。

しかし、いくら大人たちが踊りまくっていたとしても、決定的に欠けているものがある。

それは、「候補者の情報」だ。

aomorikenchijisenkyo2015 現在、選挙結果をサイトに掲載する自治体は増えてきたが、候補者情報を掲載している自治体は少ない。

たとえば、現在行われている選挙で一番大きな青森県知事選挙(6月7日投開票)は、青森県のサイトから特設サイトにリンクが張られているものの、候補者情報は選挙公報(PDF)へのリンクと、なんと政見放送及び経歴放送の予定日時刻表だけだ。これは全国の選挙に共通した問題だが、せめて政見放送はネットでそのまま見られるようにすべきだ。選管のページを見ると、かろうじて立候補届け出情報(PDF)へのリンクがあるが、写真は無く形式的なフォーマットでしかない。

青森県は2年連続投票率最下位の汚名を挽回しなければならないので、美人時計と組んでみたり期日前投票所を増やしてみたり、精一杯の努力をしている(と思われる)が、肝心の候補者の顔や政策はPDFフォーマットの公報でしか見ることができない。

ichiharasenkyo2015 千葉県の市原市長選挙市議会議員選挙は良い方で、候補者情報も選挙公報もPDFながら一応きちんと掲載されている。そしてPDFを開くと候補者サイトへもリンクされている。しかし、青森県三沢市は市長選挙が行われるのに、ウェブサイトのトップページには全く告知が無く、「くらしの情報」ページの一番下にある「選挙」をクリックするとやっと案内が出てくるが、候補者情報はどこにも無い。

このようなとき、『ザ選挙』では選挙管理委員会(選管)に電話をかけ、お願いをして送って「いただく」。ほとんどの選管は気持ち良くFAXで送ってくれるが、ほんの一部はまだまだ出し渋り、何度電話しても「留守です」「出張です」「いません」と担当者に取り次いでもらえないこともある。あからさまに「うちはインターネットには出しません」と断られることもある。

若者は何を参考に投票するのか

こんな状況で選挙権年齢が引き下げられても、いったい若者は何をしに投票所に行くのか。立候補者情報が無ければ投票には行かれない。今の若者の多くは、テレビも新聞も見ない。筆者が講師をしている大学のゼミ生に聞いてみても、新聞を毎日読んでいるのはせいぜい3%くらいだ。仮に新聞を読んだところで、選挙期間中に掲載される議会選挙の候補者情報はほとんど無いに等しい。結果としてポスターしか情報源が無いということになる。

ポスターしか候補者情報が無いのに、美人が「選挙まであと3日」とパネルを持っていても、駅前で「選挙のめいすいくん」(明るい選挙推進協会のキャラクター)がティッシュを配っていても、とても選挙に行く気にはならない。直接その美人が投票所まで付いて行ってくれるというのであれば多少は違うかもしれないが(そもそもこんな発想がオヤジだ)。

240万人の有権者が新しく誕生したとしても、せいぜい20%程度の投票率だったら約50万人だ。それだけでもゼロよりはましかもしれないが、これでは結果として何も変わらない。候補者はやはり高投票率の高齢者中心の政策を出すことになり、若者はますます政治に関心を持てなくなってしまう。

そこでぜひ、政治教育とか模擬投票の重要性に加えてもう一つ「候補者掲載情報の標準化」を進めてもらいたい。

候補者掲載情報の標準化とは

たとえば、選挙が行われる自治体は、自治体サイトの真ん中に候補者一覧ページへのリンクを張り、そこをクリックすると以下の項目が並べられている。

  • 氏名および通称名
  • よみがな
  • 年歳
  • 性別
  • 所属党派
  • 新現元
  • 職業
  • ウェブサイトURL
  • 選挙事務所連絡先

そして写真が一覧で掲載されていて、ウェブサイトにはリンクが張られている。選挙公報へのリンクもある。
ここまでやって、やっと最低限の情報発信ということになる。
『ザ選挙』的には、候補者の過去選挙情報を一覧で表示させるために生年月日も必要だが、有権者には必須ということではないので、自治体サイトに掲載する必須の情報としては上記項目で構わない。
そして全候補者がウェブサイトを開設すれば良い。

18歳選挙権が実現する参院選ぐらいはメディアも注目するし、ニュースになるので若干投票率は高めに出るだろう。しかし、それも長くは続かない。地方選挙の投票率を上げることはできない。

候補者掲載情報の標準化

これが投票率を上げるために、「まずは」必要なことなのだ。



筆者:高橋茂
『ザ選挙』編集長。電子楽器のエンジニアから2000年の長野県知事選挙を経て、政治家の情報発信の専門家となり現在に至る。株式会社VoiceJapan代表取締役、株式会社世論社代表取締役。武蔵大学社会学部非常勤講師。政治家やNPOなどの活動サポートの傍ら執筆、講演など活動は多岐にわたる。
現在、Facebook上にて会員制オンラインサロン『ザ選挙サロン』を運営している。

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