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山形市長選ルポ(後編)激戦すぎるからあえて禁断の方法で結果を予想してみると

2015/9/12

高橋 茂

高橋 茂

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関東から東北地方を激しく襲った大雨の影響で、山形新幹線は9月10日終日止まっていた。これだけ長く雨が降ると、街頭演説をやっても人は集まらず、声も届きにくい。したがって、昼は選挙カーで市内をくまなくまわり、夜の立会演説会に勝負をかけることになる。両候補も毎日7,8箇所まわって毎回100人以上の住民を集めた個人演説会を行っていた。

梅津庸成候補の総決起集会

また、大きな選挙では、投票日直前に大物弁士を呼んで、1000人以上集めた「総決起集会」を行うことが多い。
梅津庸成氏の総決起集会は9月10日に山形ビッグウィングで行われた。応援弁士は蓮舫参議院議員。参議院でまだ重要審議が続いているため、なんと滞在時間は10分。新幹線が止まっているので、車を併用して来たという。

会場は2,000人以上いただろうか。しょっぱな登場した蓮舫議員の応援演説はパワフルで、会場に集まった市民を十分鼓舞するものだった。

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2000人以上が集まった総決起集会

私は、蓮舫人気で来た人がかなりいるのではないかと思っていたので(山形の皆さん、ごめんなさい)、彼女の演説が終わってからどのくらい帰るかと見ていたが、ほとんど帰る人はいなかった。その後も続々と車は会場の駐車場に入ってきていた。

本当は肝心の梅津氏の演説が聞きたかったのだが、応援演説が何人もいて長引きそうだったので、会場をあとにして佐藤孝弘候補の立会演説会に向かった。

佐藤孝弘候補の立会演説会

立会演説会は、ほとんど各地区のコミュニティセンターで行われる。これがなかなかきれいで立派な施設なのだ。

余談になるが、山形市をまわってみて、そのインフラの立派さに関心することが多い。道路もなかなか整備されているし、公共施設も充実しているようにみえる。1年くらい住んで生活しないと本当のところはわからないかもしれないが、私の運転技術で、丸一日大雨の中、山形市内をナビだけを頼りに移動しまくっていて特に問題はなかった。

このような交通インフラや施設などのコンクリート系の充実は、自民党が強い田舎の専売特許のように思っていたが、なぜ半世紀も非自民系が強かった地域でこれだけの充実度を実現できたのか。これが実は選挙にも影響してくるように思えてしょうがない。

話を戻そう。
私は「南沼原コミュニティセンター」というところへ行き、佐藤候補の到着を待った。会場では次々と地元議員や企業代表らによる応援演説が続いていた。佐藤候補の父親と兄のメッセージを聞いたときは、涙が出そうになってきた。

地元議員らは当然自民党の議員なので、話の内容は現市政や県政への批判となる。野党の恨みつらみを聞いているようで、それはそれで面白かった。

始まって1時間ほども経ったころ、佐藤候補が到着した。彼に会うのは6年ぶりぐらいだろうか。すっかり逞しくなったように見えた。演説の声もハリがあり、力強い。この時点で私の頭の中には、彼が僅差で当選するイメージが出来上がった。「彼は山形の人たちに受け入れられる」と。

佐藤孝弘候補の力のこもった演説

佐藤孝弘候補の力のこもった演説

そのイメージで結果は見えたような気にもなったが、それでも何かがひっかかる。

梅津選対の雰囲気を感じる

私は翌日、もう一度、梅津選挙事務所に行ってみた。事務所の雰囲気が変わったのかどうか見て、昨日相手をしてくれた方に(名刺がもらえなかったので名前はわからずじまい)私の(選挙ドットコムではない)名刺を梅津氏に渡してもらいたかったからだ。それは、特に意味があるわけでもなく、単に拙書を読んでもらったお礼をしたかっただけなのだ。

選挙事務所の前は車で溢れていた。何かがあるかと思って入ってみると、選対会議の真っ最中だった。別に盗み聞きしに来たわけではないので、堂々とそこに立って聞いていたが、スタッフの「もうひと押し」感が強く出ていて、昨日感じた緩さは全く無かった。

その後、別件で事務所をあとにしたが、夕方になって梅津選対の広報担当のHさんと不思議な縁で電話で話すことができ、私が知らなかった梅津庸成氏の情報を聞くことができた。結果として彼の演説そのものを直に聞くことはできなかったが(せっかく行ったのに情けない)、ネットにアップされている動画を教えてもらい、彼のスタイルは良くわかった。

実は、「第三の男」となっている五十嵐右二(いがらしゆうじ)氏にも会って話したのだが(こちらは番外編で)、山形の方言には独特な「やわらかさ」がある。梅津氏はその「やわらかさ」を持っていた。これは残念ながら佐藤氏には無いものだった。

無理に結果を予想してみる

新しい情報が入るたびに私の結果予想が変わる。別に現場の雰囲気だけを伝えられれば良いとも言えるが、最後に私なりの結果の考え方を示したい。当たる確率は50%だ。

ここまで、両候補のプラス面、要は戦力面で結果を考えてきたが、結局のところ山形市民が何を望み、両候補をどう見ているのかわからなければ結果予測もへったくれもない。しかし、それは実際に蓋を開けてみないとわからないのだ。

そこで、これは頑張っている候補には非常に申し訳ないことなのだが、それぞれが負けた時の「敗因」を5つずつ予想してみた。

これはあくまでも「敗因」の予想であり、それがリアルであるほど敗れる可能性が高くなる。

まず、梅津庸成候補がもし負けたとしたら

  • 立候補表明が遅く、活動が不十分だった
  • 山形市長選と安保法制はそれほど関係無かった
  • 現市政、現県政への批判が強かった
  • 知事の支援や小林節先生の支援に甘えてしまい、陣営に油断が出た
  • 現在の自公の支持率が他政党の支持率よりも高かった

次に佐藤候補が負けたとしたら

  • 4年間の活動が浸透しきれなかった
  • 「山形市民」になりきれなかった
  • 山形市民は「変化」を望んでいなかった
  • 遠藤オリンピック相の応援が裏目に出た
  • 安保法制が足を引っ張った

さて、みなさんはここまで読んできて、どちらがリアルだと感じるだろうか。そして最終的に山形市民は、どちらがリアルだと感じるのだろうか。

私は、熟慮した結果、佐藤候補の方がリアルに感じた。

今回ほど両者に負けてほしくないと思った選挙は初めてだ。周りの人を惹きつける力は両者とも持っている。人格的には甲乙つけがたいかもしれない。

ただひとつ惜しいのは、佐藤候補がほとんど標準語で演説していたことだった。それまで応援演説をしていた方たちは、まるでフランス語のような山形弁を話していた。少しでも合間に方言を挟めれば。たまたま私が聞いた演説がそうであったと思いたい。

そんなこと、と思われるかもしれないが、逆に言えば、それだけの差ぐらいしか考えられないということだ。

この4年間は佐藤君(あえて君と呼ばせてもらいます)にとって、人生で一番苦しいときだったかもしれない。しかし、その中で新しい命を授かった。守るものができて、強くなった佐藤孝弘はもう負けられない。彼が当選するとしたら、それは自民党の勝利ではない。彼の4年間の勝利だ。

はたして山形の人たちはどんなリーダーを望むのか。どんな変化を望んでいるのか、いないのか。

投票日は明日13日。

 

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高橋 茂

高橋 茂

2000年、電子楽器のエンジニアから政治とインターネットの世界へ。政治家のネット活用をサポートするVoiceJapan社を経営する傍ら、講演、執筆も行う。武蔵大学非常勤講師。選挙ドットコム顧問

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