注目の山形市長選挙の結果が出た。
佐藤孝弘:56,369 当選
梅津庸成:54,596 落選
五十嵐右二:3,737 落選
(開票終了 投票率56.94%)
開票率が94%でも同数という壮絶な激戦を制したのは、自民、公明、次世代、改革推薦の佐藤孝弘候補だった。
選挙ドットコムでは4回にわたってこの選挙のレポートをお送りしてきた。現地にも入り、前後編と記事をアップしてきたが、「佐藤孝弘候補が前回落選してからの4年間で、地元にどれだけ受け入れられるか」を結論とするしか無いほど結果が見えない選挙だった。私は彼の知人でもあったので、あえて厳しい目で見ようと務めたが、その目で見ても彼は山形に来てから逞しく成長していた。しかし、それがどれだけ山形市民に伝わるのか。
両陣営を取材したが、あまりの激戦を目の当たりにして簡単には予想できなかったので、両候補が負けたと仮定した敗因を予想して、それがどの程度リアルに感じられるか、という変則的な方法で結果を予想してみた(ルポ後編)。
佐藤候補がもし負けるとしたら「4年間の活動が地元に受け入れられない」ことではないかと推測した。つまり、この4年間の地元での活動が、短い選挙期間を制するかどうか最後のポイントになると考えた。
山形市は特殊な地域で、今まで約半世紀の間、非自民系の首長が市政を司っている。そして今回、吉村美栄子山形県知事が応援することとなり、安保法案への反対運動の盛り上がりもあって、一時は知名度で佐藤候補に差を付けられていた梅津候補は、8月ごろ逆転したと見られていた。
しかし、「市政を変えるためには今回が最後で最大のチャンスだ」と考える佐藤陣営は、相手陣営の安保法制批判キャンペーンには乗らず、徹底的に地元のビジョンを示す作戦をとった。
私は、佐藤候補の立会演説会を見たときに、彼が当選するイメージを持ったが、どうしても方言の少なさが気になった。はたして山形市民は彼を自分たちのリーダーとして認めるのか心配だった。
実際に地元をまわってみて、梅津候補が敗れた理由は以下だと考えている。
陣営の油断に関しては、梅津陣営の担当者に激しく反論されたが、本当に油断は無かったのだろうか。やはり心のどこかに「知事や今話題の小林節慶應義塾大学名誉教授も全面に立って応援してくれるし、山形市はずっと非自民で来た。安保法制への批判も盛り上がって来ているので、何とか行けるのではないか」と考えるのは無理もない。しかし、言い方は悪いが「材料は揃っていたが、その素材を使う戦略が一方的だったのではないか」と感じるのだ。
梅津候補は地元出身だ。佐藤候補は山形出身ではなくほとんど繋がりはない。したがって、梅津陣営は梅津候補の「地元色」を全面に出した。それは間違っていない。しかし後半は、安保法制の批判をもとにした「平和」を強く推すようになった。バランスの問題だが、選挙が盛り上がってくると今まであまり関心無かった地元有権者も意識するようになる。その時に一番必要なのが「地元色」だったのだろう。
佐藤候補が当選したのは、彼のこの4年間の地を這うような活動が、地元に浸透したということに尽きる。それは自民党的などぶ板だったのかもしれないが、4年前に山形市に移ってきて、落選後すぐに次回選挙への立候補を表明し、第一子の誕生を経て、「もう引き下がれない」状況を作って覚悟を示してきたことが、最後には山形市民に受け入れられたのだ。さらに佐藤氏の妻は山形出身ではない。夫に寄り添い、誰も知らない土地にきて、出産して浪人中の夫を必死で支えてきた。夫婦の「覚悟」が決め手だった。
梅津陣営が「安保法制」を争点にしたこともあり、非自民系市政だった山形市という特殊な事情も相まって国政並みの盛り上がりを見せたので、安保法案に反対している多くの人たちが、梅津候補の落選を知って落胆していると思う。しかし、心配するにはあたらない。今回、佐藤陣営は全く安保を取り上げなかったのだ。
山形市は半世紀ぶりの変革が始まることになる。佐藤孝弘新市長の手腕と山形市民の選択が問われるのは4年後だ。
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