ここまで見てきた質問項目は、特定の調査において単発で尋ねられたものである。これに対し、4月以降のRDD方式による定例の調査には、安全保障関連法案に対する賛否を(ほぼ)同じ質問文で尋ねる項目が組み込まれている。
■ (4月・5月)自民党と公明党は、集団的自衛権の限定的な行使を含む、新たな安全保障法制について合意しました。これについてお聞きします。新たな安全保障法制は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。
(6月・7月)現在、国会で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。
(8月)現在、参議院で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。あなたは、この法案に、賛成ですか、反対ですか。
回答の分布をまとめたのが上のグラフである。4月の調査から5月の調査にかけて賛否が逆転し、賛成(46%)が反対(41%)を上回った。しかしその後、賛成の割合が低下する一方で反対の割合が上昇の一途をたどり、本レポート執筆時点で最新の8月の調査では、反対(55%)が賛成(31%)に大きく水を開けている。
こうした世論の動きを生んだ最大の要因は、6月4日に開催された憲法審査会において、参考人として出席した3名の憲法学者が、審議中の安全保障関連法案は憲法違反であると言い切ったことにある。爾来、民主党・日本共産党をはじめとする多くの野党及び法案に批判的な一部メディアが、「安全保障関連法案=違憲」という観点から反対の論調を強め、そのことが、法案に対する明確な態度を持っていなかったナイーヴな国民に強く影響したと考えられる。
なお、安全保障関連法案をめぐるこうした世論の動きに関して付言しておくべきことがある。それは、反対意見の増加には2つの理由が考えられるということである。法案に反対の論陣を張る一部メディアの思惑通り報道に踊らされて、「安全保障関連法案は『戦争法案』で、憲法違反だから反対」というロジックで反対に回る人が多くいる一方で、「法案の内容自体には賛成だが、学者先生が『法案は憲法違反である』と言うのであれば、真正面から現行憲法を改正した上で、憲法上問題のない形で改めて安保法制を整備すべきである。だから、今国会で審議されている安全保障関連法案には反対」という考え方の持ち主も、反対派の中には少なからず含まれると想定される。というのも、先に(1)で紹介したように、憲法9条について「解釈や運用で対応するのは限界なので、9条を改正する」という立場をとる人が35%もいるからである。あくまで推測の域を出ないが、調査で反対を表明した人が全員、法案の内容に反対しているとは限らないということも、頭に入れておく必要があるだろう。
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