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このように、内閣支持率の低下は、自民党（連立）政権に対する支持の低下というよりもむしろ、安倍首相個人に対する「ふんわりとした」支持の低下に起因する部分が大きいと考えられる。このことは、政党支持率の変動からも読み取れる。安倍内閣支持率に比べ、自民党支持率の低下の度合いは小さいのである。

確かに自民党支持率は、5月の43％をピークにその後30％台後半に低下し、8月には5月に比べ6％減の37％となっている。しかし、同時期に13％低下した内閣支持率に比べればその度合いは小さく、依然として他党の追随を許さない高い支持率を誇ることには変わりない。しかも、自民党支持率の低下は野党支持率の上昇には結びついていない。5月と8月とで主要野党の支持率を比較すると、民主党がともに10％で±0％、維新の党が2％と3％で＋1％、共産党がともに4％で±0％と、ほとんど変化しておらず、自民党支持を止めた人の大部分は他党支持に移るのではなく「支持政党なし」となっている。その結果、国会における議席数と同様、世論調査における政党支持率でも、「一強多弱」の状態が続いているのである。

政党別支持率の動き

自民党支持率がそれほど大きく低下せず、しかも低下分が野党支持率の上昇に結びつかなかった主たる原因は、有権者の大多数が自民党にしか「政権担当能力」を認めていないことにある。読売新聞社が2015年7月に郵送法で実施した「『政党』に関する全国世論調査」では、「政党の政権を担当する能力についてお聞きします。次の5つの政党それぞれについて、最も高い評価を10、最も低い評価を0、中間を5として、あなたの評価に最も近い数字を選んで下さい」という質問がなされている。その回答分布を見ると（2015年8月8日付朝刊より引用）、自民党に関しては、過半数の59％の回答者が肯定的な「6」から「10」の評価を与え、10点満点の平均は6.1であった。これに対し、民主党に関しては、肯定的な評価を与えた回答者は14％で平均は3.7、維新の党に関しては、肯定的に評価したのは13％で平均は3.7、公明党に関しては、評価が肯定的だったのは13％で平均は3.5、共産党に関しては、肯定的な評価をした回答者はわずか7％で平均は2.6であった。「自民党も『感じ悪い』が、野党の現状はそれに輪をかけて酷く、とても政権は任せられない」というのが、多くの国民の偽らざる本音であろう。

選挙への影響？

ここまで見てきたように、昨今の世論調査に現れる数字は安倍内閣にとって頭の痛いものかもしれない。しかし、こうした世論調査の結果そのものが、安全保障関連法案の行方や政権の命運を直接左右するわけではない。重要な意味を持つのはあくまで、国政選挙、とりわけ政権選択選挙たる衆議院議員総選挙の結果である。それでは、安全保障関連法案（の成立）は、来る国政選挙にどのような影響を及ぼすと考えられるのであろうか。

衆議院が解散されない限り、直近に行われる国政選挙は、来年夏の参院選である。ただ、「来年のことを言えば鬼が笑う」と格言にあるとおり、一寸先は闇と俗に言われる政界の事象を見通した上で、来年の参院選の予測をするなど、ほぼ不可能である。そこで、考える一助として、過去に安全保障政策が論争を巻き起こした際、その後の選挙はいかなる結果に終わったかを見てみることにしたい。具体的には、安倍首相の母方の祖父にあたる岸信介首相が関わった60年安保と後継の池田勇人首相の下で行われた1960年総選挙を取り上げる。

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