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候補者の“熱”の伝導師! 選挙プランナーの戦いは続く。(小池みきの下から選挙入門 .16)

2015/10/5

小池みき

小池みき

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「立候補者って、意外と自分のやりたい話を聴いてもらえないんですよ」

選挙プランナー・三浦博史氏の話は続く。

【三浦氏】
「特に大きな選挙のとき、候補者の周りには、自称選挙プロがたくさん集まるんです。皆がああせいこうせいとアドバイスする。でも候補者自身の、『僕はこういう選挙がしたいんだ』という想いを周りに“通訳”してくれる人間はほとんどいません。ベテランの地方議員に『まずはあそこに挨拶に行け』と言われ、行こうとしたら別の地方議員に『あそこは信用ならないから駄目だ、先にこっちに行け』と言われちゃう。『立候補者はこうするべきだ』っていう押しつけをする人が実に多いんだね。そういう時も僕の出番。候補者がどんな選挙をしたいのかを汲んで、有権者に見てもらえるプランを立てる。その候補者にふさわしい、独自の選挙の歴史を作っていくんです。それによって候補者や周りの人たち、さらには地方議員の人たちにも納得してもらい、みんなが気持ちよく、元気で楽しく、徹底したコンプライアンスで勝利を目指す。それが僕たちプランナーの役割のひとつですね」

【小池】
「選挙プランナーから見て、立候補者に一番大切なものってなんですか?」

私の質問に、三浦氏ははっきり答えた。

【三浦氏】
「熱です。小池さんの選挙に僕が選挙プランナーとして入るか否かを判断するとき、一番重視するのは、小池候補に“熱”があるかどうかということです。なかったら駄目。国を、街をこう変えたい、という熱、あるいは郷土愛がなかったら、いくら口先で『アタシ市長になりたいんです』と言ったってまず当選しません。『市長になったらこうしたいとか、今の市長はダメ。だから私が市長になるんだ!』とめらめら燃えている姿を見てこそ、僕や松田さんのような人間は『あ、この人はいけるな、この熱意を皆に伝えよう』と考える。僕らが熱源になることはできません。この熱をより多くの有権者に伝播させていくのが選挙運動なんです」

選挙プランナーは熱源ではない。熱源はあくまで立候補者だ。そしていかにその熱を効率的に、素早く、多くの人に伝えるか、ということを考えるのが選挙プランナーというわけだ。

【三浦氏】
「より広範囲に伝播していくためには、熱源のそばに行ったら冷えてた、なんてことがあっちゃいけないでしょ。いつでも、候補者の近くに行けば行くほどポッポッと熱が伝わって来なきゃいけない。熱伝導は送電線と一緒で、発電所(熱源)から遠くに行けば行くほど、熱は冷めていきますからね。ちなみに選挙運動の中で、最も効果的なのは、古今東西『口コミ』ですよ。しかも良いウワサは広まりにくくて、悪いウワサはあっという間に広まる(笑)」

それを聞いて、マツダ参謀長がうんうんと頷く。選挙界にいたことのない私も、これについては「そうだろうな」とすぐさま思った。学校でも会社でもSNSでもなんでも同じだ。悪い情報の方が(たとえ正確でなくても)シェアされやすいのだ。その中で、「良い」情報としての立候補者の熱を伝えていく仕事を続けるのは、とても大変なことに違いない。

【三浦氏】
「選挙の世界ではよく、立候補者を『カゴに乗る人』、その支援者を『かつぐ人』、そして、その『わらじを作る人』というように表現します。このわらじ職人っていうのは軽く見られやすいんだけど(笑)、僕は誇りをもってやってきました。短距離選手には短距離用のわらじを。長距離選手には長距離用のわらじを。そういうふうに的確に、『カゴに乗る人』やその選挙の種類に合わせたわらじを僕は作ってきたつもりです。昔の悪質な選挙ゴロのように、『このやり方で俺は県知事選挙に勝ったんだから、市長選挙でもこうすりゃいいんだ。選挙ってのはこうなんだ』と同じやり方を強引に押し付けたりすることは一切しない。それが僕のやり方です」

選挙プランナーというのは立候補者を当選させるのが仕事。そう言うと「かつぐ人」のような気がするが、よく考えれば違うことに気づく。うまく道を歩くために有効な、はく人用にカスタマイズされたわらじ――“ツール”としての戦略をコツコツと作り、提供するのが選挙プランナーの役割なのだ。

【三浦氏】
「選挙の世界は残酷です。本当に素晴らしいと思える人が立候補しても惨敗に終わることはたくさんある。しかし、僕が秘書やアメリカでの視察で学んできたことは、選挙の戦略・戦術によって、選挙には弱いが、本来、政治家になるべき人を当選させることができるということです。確かに、僕に立候補の声がかかったこともありますよ(笑)。でも僕は『わらじ屋』としての仕事に誇りを持って活動しているんで、自ら立候補する気はありませんでした」

国際交流を趣味とし、アメリカで選挙術を学んできた三浦氏は、「わらじ」という素朴な言葉で、私にその仕事の粋のかけらを示してくれたのだった。

「どうか知ってください。熱く、強い気持ちがなければ政治はできないんだって、いつも僕の背中を押してくれた人がいたことを」
――『CHANGE』第十話
「さようなら、朝倉総理涙のラストメッセージ」より

 

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小池みき

小池みき

ラ イター・漫画家。1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合 のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き。

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