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クラスで投票に行くのは、一体何人??高校での「主権者教育」現場を追う

2015/10/6

原口和徳

原口和徳

主権者教育現地レポート

今夏、実に70年ぶりに引き下げが決定された選挙権年齢。2016年夏の参議院議員選挙からは、18歳と19歳を合わせて新たに240万人もの有権者が加わることになります。少子高齢化が進む中、これまで以上に若者の声が政治に届けられるようになることが期待されていますが、「若者×選挙=低投票率」といった定式に、頭を悩まされている方々も多いのではないでしょうか。
そのような中、若者と政治を結びつける取組みとして、「主権者教育」に注目が集まっています。今日は主権者教育の具体的な取り組みの1つである模擬選挙について、事例をレポートします。

2015年7月15日。日本で最も快晴の日数が多いことを誇る都道府県らしく、この日も埼玉県はよく晴れていました。この日、クラーク記念国際高等学校さいたまキャンパスの選択社会の授業において、埼玉県知事選挙模擬選挙が行われたのですが、お天気同様に晴れやかな取り組みとなったのでしょうか。

授業の詳細を確認する前に、まずは背景を確認しておきましょう。

埼玉県知事選挙は、ここしばらく全国的に見ても特徴的な低投票率が続いており、前々回2011年の知事選挙で記録した投票率24.87%は、歴代知事選挙におけるワーストワンの記録となっています。特に、若者層における低投票率は際立っており、前々回知事選挙における20代有権者の投票率は12.5%、実に世代有権者8人の内7人が棄権するといった衝撃的な状況となっています。
このような状況を変えるべく、この夏、埼玉県知事選挙では、有志による様々な取り組みが行われました。クラーク記念国際高等学校における模擬選挙もこれらの動きと連携しつつ行われています。

実際の授業の様子

授業に参加した生徒たちは、2014年度末の衆議院議員選挙において模擬選挙を経験していることもあり、すでに選挙や投票の仕組みは理解しています。そこで、授業では、より主体的に投票の機会を活用する技能を取得することを目標とする様々な工夫が行われていました。
具体的には、主要候補者から提供を受けた共通書式の政策(マニフェスト)を、実際の有権者の取組みを参考に作成した投票基準で評価し、投票を行う、といったプログラムが実施されました。

国政に比べ、地方自治体の選挙では、選挙に関する情報を集めにくい状況にあります。特に、今回の埼玉県知事選挙は主要候補者の構図が決まるのが投票日の約1ヶ月前と、ただでさえ情報を得ることが難しい状況でした。そのような中、本授業では、市民目線で共通の政策書式の提供、オープンデータ化を呼び掛けている運動であるマニフェスト・スイッチに着目し、同サイトに登録されたマニフェストを用いて、生徒たちに政策情報を提供しました。

また、政策の分析結果を投票行動に結びつけるために、地方議会議員やメディア・シンクタンク職員、子育て世代のビジネスマンなど、多様な立場の有権者に投票基準をインタビューし、自分たちにあった投票基準を考える素材としてゆきました。

このようにして得られたマニフェストと投票基準をグループワークで活用していく中で、生徒たちからは様々な声が聞こえてきました。

「書いてある内容が、わからない。来年から有権者となることを考えると、もっと勉強しないと」
「いやいや、そもそも、わからないことを書いている人がいけないんじゃない?伝える努力をしてもらわないと」

「なぜ、お年寄りに向けた政策が多く、私たち学生に向けた政策が書かれていないのだろう?」

などなど、はっとさせられるような意見も多く見られました。(生徒たちの様子の詳しい分析は次回の記事で詳しく紹介したいと思います。)

その後、投票へと臨んだのですが、ここで1つサプライズが。
今回の模擬選挙は多くの方の協力を得て行われましたが、県内のある選挙管理委員会からは、投票箱の実物をお借りすることができました。
「投票日の早朝。最も早く投票所を訪れ、投票を行う人は、投票箱の中身が空であることを選挙の立会人と共に確認し、サインした後に投票を行う」など、選挙にまつわる裏話なども学びながら、いざ投票が行われました。

投票後、「投票結果は、2学期の授業で発表する」旨が告げられて、この日の授業は終了となりました。

さて、投票結果も気になるところですが、それ以上に模擬選挙の取組みが生徒たちにどのような変化を及ぼしたのでしょうか。次回の記事で詳しく報告したいと思います。

 

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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