さて、8月から急遽始まった選挙漬け取材レースもついに3ヶ月目に突入した。3ヶ月といえば、ダイエットでもなんでも、ようやく目に見える効果が出てきて浮かれる反面、気が緩んでリバウンドし始めたりする時期でもある。
【マツダ参謀長】
「さて、選挙の裏方の大物(選管アドバイザー・小島勇人氏)と、選挙の現場の大物(元祖選挙プランナー・三浦博史氏)の二人と続けて会ってみたわけですけど、どうですか。ちょっとは選挙のことわかってきました?」
【小池】
「わかるというかなんというか……。うーん……」
【マツダ参謀長】
「煮え切らない顔してますねえ。ラーメンでも足りないんですか?」
【小池】
「いや、ラーメンは足りてるんですが、選挙についての理解はまだまったく足りてないような気が……」
【マツダ参謀長】
「まぁそりゃそうだよね。足りなくて当然だよ。わからないところは、聞いてくれれば説明しますよ。選挙に関してだったら池上彰さんの次の次くらいにはわかりやすく説明できる自信があるので」
【小池】
「(池上彰さんの次の次ってどのくらいなんだろう)細かいところで時々『ん?』ってなるんですよね。たとえば三浦さんが、『県知事選の勝ち方を市長選にも押し付けるような昔の悪質な選挙ゴロが……』っていう話をしていたじゃないですか。すご〜〜く根本的な質問で恐縮なんですけど、県知事選と市長選ってそもそもそんなに違うんですか? あと国政選挙と地方選挙とか」
選挙には実はけっこう種類があるのだ。一番規模がでかくて目立つのはもちろん、国政選挙と呼ばれる衆議院議員選挙と参議院議員選挙。そして、都道府県知事や市町村長といった地方行政区の首長を選ぶ選挙、更にそれぞれの都道府県議会議員選挙もある。
選挙は選挙だ、という見方でどれもそんなに違わないように思っていたのだが、小島さんや三浦さんの話を聞いて、もしかして違うんじゃないかという気がしてきたのだ。
【マツダ参謀長】
「うん、国政選挙と地方選挙はまったく別物ですね。地方選挙でも県知事選と市長選も違うし、都道府県議会議員の選挙と市議会議員の選挙も違いますね」
【小池】
「何が違うんですか?」
【マツダ参謀長】
「それは小池さんの、つまり有権者の立場で考える方がわかるはずですよ。だってまず、選ぶ相手が違いますよね。県知事選は県知事を、市長選は市長を、市議会議員選挙は市議会議員を選ぶ選挙ですから。選挙区とか選挙運動期間、定数の違いもあるけど、根本的な違いというのは、有権者と、有権者が選ぶ相手の関係性にあります」
【小池】
「有権者と、選ぶ相手の関係性?? もっと池上彰くらいわかりやすく言ってください」
【マツダ参謀長】
「ぐぬぬ…。あ、いいこと考えました。選挙の裏方、現場と話を聞いてきたので、次の取材先はもっと根本的な、『選挙とはなんぞや』というところに立ち返れる、『学問』分野の話を聞きにいきましょう。日本選挙学会っていう学会があるんですよ。僕そこの会員なんで理事長にアポとりますね」
【小池】
(選挙に学会なんてもんがあったんだ……?)
というわけで、取材先第四弾として連れてこられたのは日本大学法学部。日本大学法学部新聞学科の教授で、日本選挙学会理事長もつとめる岩渕美克(いわぶちよしかづ)先生が出迎えてくれた。岩渕先生は、日本を中心に、政治過程におけるメディアと政治の関係を研究している方である。
【マツダ参謀長】
「今日は選挙のアカデミックな話を聞こうと思っているんですけど、まずは日本選挙学会について説明いただいた方がいいですかね。一般の方はその存在すら知らないと思うので」
【小池】
「はい、まったく知らなかった一般人です」
【岩渕先生】
「いやあ、一般人のみならず……(笑)。
学者とか、政治家とか、政治周りの職の方の中でも、『選挙学会ってナニ?』って人はたくさんいらっしゃいますよ。立ち上げは1981年だから、実はもう30年以上の歴史があるんですけどね。もともとは、選挙研究の蓄積と、海外の選挙研究者との交流、あとは海外の学会との交流、その三つを目的に立ち上げた学会です。日本では、選挙単独の研究の蓄積がなかなか進まなかったんですよ。研究者はいるし、選挙は実際に行われているのにも関わらずね。日本政治学会があったので、選挙研究はその一部として扱われていたんですね。研究者を増やしていって、業界内外の選挙への関心を高めていこうというのが活動の目的なんですけど、まだまだマイナーで」
【マツダ参謀長】
「アメリカでは選挙研究って盛んですよね。僕も日本と海外の選挙制度を比較している本とか、よく読みます」
【岩渕先生】
「日本には、選挙を専門としている研究者が少ないし、その研究を実際の選挙制度とか政治に結びつける力がまだ弱いんです。最近ようやく、分析結果などの蓄積が増えてきたところですけど。政治家が『学者に政治の現場のことがわかるもんか』って思っていたりとかね……。選挙の基本理念とか制度についての議論に、今ようやく広がりが出てきたところでしょうか」
【小池】
「選挙について、足りていない議論ってどういうものがあるんですか?」
【岩渕先生】
「そもそもの話になってしまいますが、『どういう代表を選ぶべきなのか』という、根本の大事なところについてこそ、あまり議論されてない傾向がありますね。本来、選挙ごとに、選ぶべき相手は違うんですけどね……」
「選挙ごとに選ぶべき相手は違う」。また出てきた言葉だ。これってどういう意味だろう? というわけで、選挙の根本に立ち返る岩渕先生編、スタート。
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