参院で審議されていた安全保障関連法案は9月19日(土)未明に、賛成・反対が鋭く対立する中、可決・成立した。その直後から、野党議員はツイッターや街頭で、2016年夏の参院選に向けたアピールを開始。野党の党首らが共闘への話し合いを始めた。
野党議員は採決手法とプロセスに瑕疵があり「採決無効」と現在も繰り返し訴えている。地方公聴会の報告がなされなかったことや、次に採決が議事録に記載されていないことを問題視し、野党側の批判材料になっている。
委員会採決を振り返ってみると、大勢の議員が入り乱れ、鴻池委員長を取り囲んだように見えた。
その後、野党議員から「取り囲んでいたのは与党議員」「委員会以外の人物がいた」とのツイートがあった。法案成立から一夜明け、市民により特別委員会採決時の議員を特定する動きが始まった。
検証結果を見ると、委員長を取り囲んでいる議員は全員が与党議員で、委員会メンバーではなく部外者であった。中には懐中電灯で委員長を照らしている人物もいた。
現在、ネット上では当時の動画キャプチャー画像から、そこに写る人物が特定され、顔写真付きの一覧表として拡散されている。そしてこれが、落選運動へと紐付けされつつある。
正式な手続きを経ずに行われた採決を「クーデターだ」と表現する人たちもいる。
部外者乱入による法案採決の是非を問われ、その正当性があるのかどうか。圧倒的多数の与党側は、このような乱暴なやり方をしなくとも法案の可決・成立は可能だっただろう。手続きの不備、委員会以外の部外者乱入といった「乗っ取り」のような議会運営を許してまで、強権的なやり方をしなければならない理由はなかったはずだ。
政府与党は公の場で「法の支配に基づき」と口にするが、法治国家・立憲主義は、その場しのぎの理屈で法を曲げる手法がまかり通れば、その安定性も支配も崩れてしまう。「法案成立」の既成事実だけを残したいのであれば、議会及び国会の存在意義を根底から揺るがしかねない。問題はこれだけではない。委員会部外者による乗っ取りのような議会運営で、野党議員の表決権を剥奪したことで、議員自身の存在をもないがしろにしたのではないだろうか。
法案成立までは連日、安保法に関する報道がされたが、成立後はほぼなくなった。全国に拡大した抗議行動は沈静化しているような印象もあるが、法案成立の瞬間から、来夏の参院選に向け法案賛成議員に対する落選運動を開始。10月2日(金)には、安倍政権にNOを突きつける大規模な抗議集会とデモが行われるなど、その手を緩めてはいない。
また、野田聖子議員のコメントが3日付の朝日新聞に掲載されるなど、自民党内からも声が上がってきた。記事では、衆院特別委員会の浜田委員長の「運用面や予算のハードルが高く、国民が恐れていることはなかなかできない」との発言が明かされている。これは、表立って反対の声をあげていないが、安倍独裁色を強める党内で「運用面で歯止めをかけられるのであれば、ひとまず賛成」の態度をとった議員もいることを表しているのではなかろうか。ただこれは、次期参院選をにらんだアピール合戦の一環である可能性もある。
これから、法案施行に向け、政府は抜け目なく既成事実をつくっていくだろう。野党共闘の行く末、市民による抗議行動とともに注視していきたい。
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