月額4,800円で国会議員全員にFAXで意見を届けるサービス「Japan Changer」。このサービスを開発した村上さんは、これまで、東日本大震災や海外で災害が起きた際、支援を必要としている人に直接、義援金を持参するなど、仲介企業を通さずダイレクトな支援を行ってきた。
そして今回、FAXを使って国会議員と国民をつなぐ活動を開始。9月17日未明に可決・成立した「安全保障関連法」の際は各メディアでも取り上げられるなど、話題となったこのサービスを開発した理由、利益はどのようになっているのかなどについて、村上さんにお話をうかがいました。
【村上福之さんプロフィール】
1975年生まれ。関西の家電メーカーを退職後、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアへ。そこでWebデータベースの仕事を開発したことで、オーストラリアの独立技術永住権を取得した。日本に帰国後の2007年に㈱クレイジーワークスを設立し、スマートフォンと携帯を中心にシステム開発を行う。
ーー改めて、このサービスを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
実は過去に何回か反原発デモなどに行ったことがあるんですが、見ていて“デモにあまり意味がないな”と思ったんです。
そもそも夕方の6時にデモをしても、国会議員は帰っているから声は届かないじゃないですか。新宿とか渋谷でデモをしても、政治家は新宿や渋谷にいないですよね。料亭もないですし。
ーー最近のデモだと若者がやってたりするじゃないですか。安保ではSEALDsとか注目されましたが。
実際に参加しているのは高齢者が多いですよね。でも、テレビなどで見ると、前方にいる若者を一所懸命、撮ってるじゃないですか。その部分は若者かもしれないけど、残りはお年寄りしかいなかったりする。このメディアの偏向。これはなんなんですかね。ストーリーの上でお互いが作ってて、なんだか作られたお祭りみたいな感じで。で、その声は議員には届いていない。
ーー議員がいないところで叫ぶのではなく、意見は直接届ければいいのでは? と考えたことが、このサービスを作るきっかけですか?
そうです。本会議の連絡なんかは基本はFAXで届くので、議員会館においてはFAXが一番有効な手段なんです。メールはあまり意味がないかもしれないけど、一応、参院に関しては議員のメアドが紐付けられてるみたいですけどね。
ーー国民の意見がFAXで届くということを知って、さっとサービスを作ってしまうことがすごいです。
そんなに大変なものじゃないんですよ。それよりも、国会議員全員の情報を集めることが大変で、そのバイトに3万円かかってます。
ーー最近、村上さんのTwitter(https://twitter.com/fukuyuki)で面白かったのは「安保関連法案が可決されたらFAXが全然来ない」というお話でした。
そんなもんですよね。ぱったりです。
ーー実際にスタートさせてみて、すぐに反響は来たんですか?
最初は結構きました。初めは支払い方法がPayPalと銀行振込だけだったんですけど、PayPalはネットに不慣れな人とかだと使いにくかったので、途中からクレジット会社の決済を入れました。そうしたら増えていきましたね。
ーー届けられた議員さんからの反響ってありましたか?
何人かいましたよ。その中で、山田太郎参議院議員や秘書の方からは「こうした方がいいんじゃないの」といった意見をもらったりしました。
初めの頃は、フリーフォーマットで送っていたら「読めない」といわれたこともあったので、議員が読んだFAXを調べて、フォーマット化して送るようにしました。そこを整理してやるようにしたら読まれるようになったんですよ。議員に届けるものは、こちらで誓願法で整理しています。
ーー送ったFAXは、本当に議員に届いているんですか?
議員秘書までは届いていて、そこから先、議員が読むか読まないかはその事務所の運営や規模次第の部分もあって。でも、それは仕方ないですよ。ただ「デモよりは効果がある」といわれました。「デモよりは具体的に書いてくるから」と。
ーー議員への意見を確実に届ける手段は、今まであまりなかったですよね。
意見を届けることについてある議員さんに話しを聞いたら「意見をいいたかったらパーティー券を買ってください」っていわれたんですよ。「それが一番確実です」と。なぜならそれはAKBの握手券みたいなもので、議員はお金さえ払えば会いに行ける。そしたら議員は国民の話しを聞きますよね。
ーー利用者からは意見はありましたか?
議員別、省庁別に送って欲しいという声はありました。それをやると、議員一人当たりのFAX代金が10円とか20円になって、それをクレジット決済にすると僕らにお金が入ってこないんですよ。そういう中で、ぶっちゃけ、僕がDM業者に手動で発注しているので、その作業が面倒なんです。
それに、そこまで政治に関心がある人の方が圧倒的に少なくて、どこの党がどんな政策を持っているとか、その辺を分かって論じている人は少ないので、分ける手間がね…。
ーー利用者は、デモなどに行ってるような方でしょうか。
デモに行ってる方も多いですし、地方にいてデモには行けないけど意見を届けたい方とかですよね。問い合わせとかで電話をかけてくる人は高齢者が多いです。
ーー送られてくるものの中には、ポエムのようなものもあったそうですが。
Stop war、Love平和、想像してごらん、戦争のない世界を みたいな、意見ではないものが送られてくると、「これ(議員に)送っていいのかな」と。
ーー感覚的なもので構わないんですが、どのくらいの割合でしたか?
20通に1通くらい。長い文章を書いてくるのは、高齢者とママさんとか女性の方が多いです。
ーーちなみに、安保法案のときには何通くらい送ったんですか?
議員が717人なので、7万通くらい送ってます。どこかの媒体がFAXで意見を送ることについて議員に聞いたら「そのFAXの紙も税金だ!」とか「税金の無駄だ」といわれたりもしました。
ーー安保法案成立後は、利用者がいないということでしたが。
元々そんなに宣伝もしてなくて、やっても赤字になるだけですけど、これからも一応、続けていきます。粛々と。今後はなんでしょうね。TPPとかでも怒ってる人はそんなにいませんし、みんな、いうほどそこまで政治に興味ないですし。今後の争点ってなんでしょうね。
ーー村上さんの利益はあるんですか?
ほぼないです。ボランティアですよ。もともと儲ける気もそんなにないし。むしろ手間が多かったです。
ーー単純に自分がおかしいと思ったことを解決してあげようということだったんですか?
その方が絶対に楽しいですからね。
ーー今回の件を通じて、さらに改善した方法とか、新たなプランのオファーとかはありましたか?
そういうのはないです。そもそも、議員にとって国民の意見を吸い上げるメリットはほとんどないですからね。国民の声を聞いたからといって選挙の時に票の数が上がるわけでもないですし。議院内閣制にしても中選挙区制、小選選挙区制にしても、票を取るエリアが狭くなればなるほど、国民の声を幅広く聞かなくてもよくなるんですよね。自分の選挙区の有権者の声を聞くのはアリですよ、それは。どこの誰かも分からない人の声を聞いても、票数が上がるかといったらそれはNOですし。難しいですよね。どんどん国民のための政治をしなくていいシステムなっているから、ある意味、上手なシステムになってますよね。
ーーJapanChangerの今後は?
粛々と続けていくつもりです。選挙ドットコムはどうなんですか?もっと面白い事できると思いますよ!
ーーはい!盛り上げていこうと思っています、頑張ります。
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