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引退するって本当ですか??橋下徹の「政治生命」を、大阪ダブル選から徹底分析してみた

2015/11/9

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永田一郎

11月22日に大阪市長選大阪府知事選(いわゆる「大阪ダブル選」)が投開票される。ダブル選の結果は与野党に一定の影響を与えるとみられており、永田町の住人たちも注視している。ダブル選は中央政界の動きとどう関係するのか。ポイントは、橋下徹大阪市長の「政治生命」である。

市長選の勝敗で決する橋下氏の政治生命

ダブル選で特に注目されているのは、11月8日に告示された大阪市長選である。

市長選は橋下氏の任期満了に伴うもので、告示前から有力2候補の接戦が伝えられている。橋下氏の後継である吉村洋文氏と、与野党が相乗りで推している自民党元市議の柳本顕氏だ。

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吉村氏が勝利すれば、政界における橋下氏の求心力は一定程度維持される上、近い将来、「政界復帰」につながる。柳本氏が勝てば、橋下氏の影響力は低下し、橋下氏自身が〝宣言〟した通り、「政界引退」が決定的となる。

大阪にとどまらず、全国で「維新旋風」を巻き起こした橋下氏のパワーが温存されるのか、失われるのか。永田町の関心は革命児・橋下氏の「浮沈」の1点に集中しているといっていいだろう。

仮に橋下氏の後継候補が勝利した場合、橋下氏が結成した国政新党「おおさか維新の会」(19人)の求心力が高まるのは確実だ。少数ではあるが、橋下氏の「親衛隊」のような存在であり、団結して行動すれば野党戦線をかき回すこともあり得る。さらに、維新の党から離党した中間派の無所属議員(6人)から、おおさか維新の会に参画する議員が出てくる可能性もある。

橋下氏の浮沈と各党への影響

与野党との関係を整理すると、安倍政権寄りの橋下氏と敵対する民主党は、市長選での後継候補勝利にがっかりするだろう。橋下氏の政治力が残ることは、自分たちが目指す野党結集の障害になると考えるからだ(注・民主党内には橋下氏との連携を模索する勢力もいるが)。

民主党は引き続き、松野頼久代表らの維新の党(26人)との連携を加速させていくことになるが、おおさか維新の会が息を吹き返せば、維新の党とおおさか維新の会の「分裂抗争」がさらに激化することも想定される。橋下氏の後継に負けて欲しい、と思っているのが民主党である。

一方、おおさか維新の会も維新の党も、政党交付金をめぐる醜い「ケンカ」で国民の反感を買っており、そもそも、ダブル選の影響は限定的との指摘もある。

気になるのは、政府や自民党との関係だ。ややこしいことに、安倍晋三首相や菅義偉官房長官は、橋下氏やおおさか維新の会に内心では好意を寄せている。しかし、自民党大阪府連にとっては橋下氏は憎き敵でしかない。

橋下氏は表向き「政界引退」を約束しているが、近い将来、「政界復帰」するとの見方は根強い。そして、政界復帰した橋下氏が政府に近づくことは容易に想像できる。最近では、安倍政権の閣僚になるとの噂も流れているほどだ。政府・自民党にとっても、橋下氏の「浮沈」は大きな関心事なのである。

では、橋下氏の後継候補が負けた場合はどうなるのか。

民主党は、おおさか維新の会の力が弱まることは大歓迎だ。橋下氏と激しく対立する共産党にも吉報だ。維新の党も、自分たちが「正統」と思っているから拍手喝采だし、自民党も、大阪選出議員を中心に喜ぶ。ちなみに、安倍首相は面白くないはずである。

大阪ダブル選後をにらみ新党結成?

さて、偶然とは面白いもので11月、12月は政界の風物詩である新党結成シーズンでもある。これは、各政党に国庫から支払われる「政党交付金」の金額が、毎年1月1日時点で決まるためである。12月末までに政党要件を満たして総務省に届け出を済ませておけば、翌年から政党交付金がもらえるという仕組みだ。1月2日に総務省に届け出ても、その次の年まで1年間も政党交付金が支給されない。

ちなみに、公職選挙法で定める「政党」の要件は

1)所属する国会議員が5人以上
2)直近の国政選挙での得票が全国の有効投票総数の2%以上

となっており、いずれかを満たす必要がある。

以上を踏まえれば、大阪ダブル選の結果が出る11月22日から、12月31日までの間に「駆け込み」で新党結成を目指す議員が出てくるかもしれない。

しかしながら、野党各党には新党結成を含めた「離合集散」を繰り返すほどのエネルギーはない。民主党と維新の党の合併の見通しは立っていない上、民主党が分裂する気配はゼロだ。無所属議員たちが5人以上の国会議員を集めて、政党交付金目当ての小政党をつくるのがせいぜいだ、というのが玄人の見立てである。

2005年以降、11月、12月の2カ月間に結成された新党は6党あったが、結成時の「名称」で存続している政党はひとつもない。国民の目は厳しいのである。

 



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