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「やや先行」ってどれくらいの差!?大阪ダブル選紙面比較、かしこい新聞の読み解き方

2015/11/17

選挙ドットコム編集部

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11月22日投開票の大阪府知事選市長選について、読売・朝日・毎日・産経・日経新聞が情勢調査の結果を発表しました。まずは、各社の調査の方法と、記事の内容についておさらいしてみます。

一面で情勢調査結果を報じる16日朝刊各紙

一面で情勢調査結果を報じる16日朝刊各紙

読売新聞

読売は、調査は大阪府の有権者がいる世帯を対象に、無作為に作成した番号に電話をかける方法で実施したと公表。有効回答1634人(大阪市在住は581人)で回答率は58%とし、両選挙とも2割強の人が態度を決めていないとしたうえで、「知事選は大阪維新幹事長の現職・松井一郎氏が優位に立ち、無所属で自民党推薦の前府議・栗原貴子氏が追う展開となっている。市長選は、地域政党・大阪維新の会が擁立した前衆院議員・吉村洋文氏がややリードし、無所属で自民党推薦の前市議・柳本顕氏が激しく追い上げている」としています。

朝日新聞

朝日は、大阪府知事選は府内、大阪市長選は市内で、それぞれ別の有権者を対象に調査を実施。有効回答は、大阪府知事選調査が1126人、回答率64%で、大阪市長選調査が1020人、65%で、両選挙とも4割の人が態度を決めていないとしたうえで、松井氏が優勢で、栗原氏が追う展開。市長選では吉村氏がやや先行し、柳本顕氏が激しく追うと報道。

毎日新聞

毎日は、産経新聞、共同通信、毎日放送、関西テレビと協力して実施し、得られたデータのみを共有し、各社が独自に分析したと公表。府知事選の調査で実際に有権者がいる世帯に電話をかけ、うち1507人から回答を得たとし、市長選では802人から回答を得たとしたうえで、両選挙とも3割の人が態度を決めておらず、終盤に情勢が変わる可能性もあるとし、「知事選では松井氏が、栗原氏らに対して優位に立っている。市長選では、吉村氏がリード。柳本氏が追う展開となっている」と伝えています。

産経新聞

同じ調査結果を利用している産経「(知事選は)松井氏がリードし、栗原氏を上回っている。市長選は、10月下旬の段階では柳本氏と吉村氏が競り合っていたが、吉村氏が引き離しつつあると書いています。

日経新聞

日経新聞はテレビ大阪と共同で日経新聞関連会社の日経リサーチに調査を依頼したと公表。大阪府内の有権者を対象に電話をかけ、有効回答は795人、回答率は67.4%だったとし、両選挙ともに有権者の2割前後は現時点で投票先を決めていないと明らかにした上で、「知事選は松井氏が、栗原貴子氏らより優位に立っている。市長選は吉村氏が、柳本氏をやや先行としました。

 

こうしたマスコミ各社の情勢調査記事に使われる表現には、一定の基準があると言われています。例えば、A候補に対する報道が「安定した支持」や「幅広く浸透」と書かれた場合や、対する2番手のB候補が「苦しい戦い」「伸び悩む」などと表現された場合、Aの優勢が20ポイント以上離れている状態だと分析することができます。

今回の情勢記事では、知事選では読売を始め4紙が「松井氏が優位」とし、産経が「松井氏がリード」と報道。この場合は、松井氏が他候補に比べて10〜19ポイントリードしている状態だと考えられ、各社が「投票締め切り後、『当確』が早い時間帯で打てると判断する」ほどの差があることを示しているものと思われます。

一方、市長選でも全紙、吉村氏のリードを報道。しかし、その表現の仕方には若干の違いがあります。読売・朝日は「吉村氏がややリード、柳本氏が激しく追う」と伝え、日経は「吉村氏が、柳本氏をやや先行」と表現。同じ調査結果を利用した毎日と産経は、毎日が「吉村氏がリード、柳本氏が追う展開」、産経が「吉村氏が(柳本氏を)引き離しつつある」と書いています。

おそらく「やや」という表現を使った前者のグループは、吉村氏が柳本氏に比べて5〜9ポイントの差がつき、「リード・引き離している」と断定を使った後者のグループは吉村氏が10〜19ポイント上回った状態の調査結果がでたものと分析できます。

なお、今回の場合、各選挙とも2候補以外の名前が挙げられていない点で、各社当選圏外と判断した、と読み取ることができます。

また、争点となっている大阪都構想について賛否を聞いた産経は、「市民対象の調査で賛成45・9%(反対44・9%)、府民対象は賛成49・7%(反対33・6%)だった」とし、大阪維新が都構想を再び掲げることについて聞いた朝日は、「知事選調査では「納得できる」が44%、「納得できない」が33%。市長選の調査では「納得できる」41%、「納得できない」43%だった」と伝えています。

最後に、各社は「有権者の●割は投票態度を明らかにしておらず、情勢は変わる可能性がある」と必ず書き加えます。そこには、報道により、有権者が先入観を持つことを防ぐ目的があり、事実、選挙は最後まで何が起こるか分からないということを表しています。

しかし裏を返せば、読売や日経の調査に協力した人のすでに約8割が心を決めていると回答していると読むこともできます。こんなとき、各選挙事務所に想いを馳せてみると、維新関係者の多くが心の中でガッツポーズをしながら気を引き締め、非維新の関係者の多くは朝日の調査に協力した態度を決めていない4割の人の伸びしろにかけて残りの選挙戦を戦い抜くことを誓っているはずです。

大阪ダブル選挙も終盤戦。編集部も残りの選挙戦を見守っていきたいと思います。

 

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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