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大阪維新と安倍政権は「似てるよね。だから僕らは支持しない」。SEALDs KANSAIメンバーの本音を聞いてきた【前編】

2015/11/18

堀江昌史

堀江昌史

今夏の国会前、大勢の若者がマイクを握り、安保関連法案に反対の声を上げました。その中心にいた学生団体「SEALDs」。その関西団体である「SEALDs KANSAI」が今回の大阪ダブル選挙では、大阪維新の会の政治に反対の意を表明し、公式ホームページでは大阪で暮らし、働く人たちに生の声を聞いたインタビューを掲載するなど、積極的な「反維新」運動を展開しています。

国会前で「安部はやめろ」と叫んでいた彼らが、なぜ実質的に自民党候補者を推すような方針をとっているのでしょうか。中心メンバーで、今回の大阪ダブル選挙プロジェクトを担当する脇田燦志朗さん(23)に、法案通過後から「反維新」活動に至るまでの話をお聞きしました。前後編の2回に分けて、インタビューの内容を掲載します。

安保関連法案の反対運動で得たものは「国民の関心」と「民主主義」

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大阪ダブル選挙プロジェクトを担当する脇田燦志朗さん

——安保関連法案は結果的に通過しました。どう受け止めていましたか?

正直、絶望っていうか、「ああ、通過してしまったか」という悔しい気持ちはありました。したくてしている活動かと言われたら、100%そういうわけじゃない。もっと学生らしく友達と遊びに行ったり、旅行に行ったり、そういうことに時間やお金を使いたい。でも、この夏はみんな全てを捧げて活動しました。メンバーのなかには、国会前で涙している子もいた。でも、他の反対している人たちのSNSの反応を見ていると、残念がっているけど、全然諦めていない。次の行動に移そうという気持ちが溢れていた。国会の中で頑張っている議員さんや、全国に集まった人たちをみて、まだまだ可能性はあるはずだって、活動を続ける気力につながりました。

 

——反対運動を通じて得たものはありましたか?

ここまで、活動を大きくできると思っていませんでした。国民の皆さん、若い子も含めて、関心が起こった。無関心であるのと、ないのとは、次の行動に移ったときに関心の高まりが全然違うので、僕たちの次の行動が広まりやすくなったというのは大きいと思っています。今まで声をあげてこなかった人たちが、今回は自分のこととして声を上げた。社会的にもこういうことに声をあげていいんだ、黙っていなくたっていいんだ、って意識が変わってきた。行動に移せる人たちが増えてきたと思います。国会のやり方とは逆に、国民の中には民主主義を否定するやり方に反対する意識が芽吹いた。社会的にみたときに、僕たちが与えたその2点の影響は大きかったと思っています。

 

——活動が批判されることもありました。

「結局決めるのは選挙だろう」と批判する人もいました。僕たちもデモや街宣がすべてとは思っていません。政治的決定として選挙はありますが、デモや街宣は民意の一部。それを否定されるのはまちがっていると思います。今回のデモには、十何万人が国会前に集まり、全国各地でも30万人規模が集まって声をあげました。法案はもっと早い時期に通る見通しだったのが、9月にずれ込んだと言われています。遅らせることができた原因としては、確実に僕たちのデモ、街宣、野党の人たちの頑張りがあった。あげる声は無駄にならない、と伝えられる活動になったと思っています。

 

——課題は見つかりましたか?

確かに12万人集まったのはすごい。でも、まだまだそれだけ。若者への政治的関心はまだまだ広がっていません。多くの人は「今自分に関わっていないから関係ないな」っていうふうに受け取っています。僕らは、もし自分が大人になって結婚して、子どもができたときに、その子どもに影響があるかもしれない。その可能性を考えたときに声をあげているのであって、可能性が高まれば高まるほど、危険な方向に進んで行くというのは明らかなので、その可能性を高めないように活動します。そういうことを真剣に考えている人は、まだ少ないかな。メンバーの中でも、活動には濃淡がある。みんなが社会をつくっていくそのひとりひとりなんだよ、って意識をもってもらうまでには、まだまだたどり着いていません。

 

——可能性とは?

戦争とか、自衛隊に入らなければならない状況になるのではないか、という可能性。通過した法案を使って、銃を背負って海外にいくとなると、あちこちで問題が起こる可能性は高まります。そうなれば命のリスクは高まるのは、必然的なこと。絶対に戦争になるということではないし、明日、徴兵制になるとも思っていません。けど、ゼロか100かじゃない。戦争が起きる可能性が、1%、10%、20%と徐々に高まるのをなんとか止めたいと思っています。極論を話しているのではなくて、危険が高まらない社会のほうがいいと言っているだけ。

SEALDsのデモや街宣「若者に関心広げるきっかけになる」

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SEALDs KANSAI ウェブサイト「大阪W選挙プロジェクト“ R E A L ”」より

——安保法案通過後、次の行動はいつごろから考えてきましたか?

法案として国会で成立してしまったから、法的根拠なしに撤回はできない。でも、それで終わりかといったらそんなことはなくて、法案にもう一回反対をして法案をゼロにしてくれる人たちを国会に送ればいいだけです。夏の参院選、衆院選、改選の参院選と、巡り巡って選挙があるわけで、そこでもう一度戦って、この法案を廃案に持ち込めたら、それは勝ち。「次を見据えて、もう一度動き出そう」とみんなで話し合いました。ただシールズとして、選挙に関わるのは初めて。選挙に対してどう動くのかが課題。そこを悩みに悩んで、今も勉強中です。

 

——来年参院選は、18歳にも選挙権がある。若者に選挙に行ってもらうために意識していることはありますか?

DSC_2057 のコピー僕が小学生の頃、アメリカの貿易センタービルに飛行機が突っ込みました。でもそれ以上に、イラク戦争のニュースが本当に衝撃的でした。ビルが崩れたことの仕返しが、武力での行動だったことがショックだった。平和学習で、「二度と戦争をしてはいけない」、「武力に武力で返すのはいけない」と学校で学び、親にも「喧嘩はいけない。暴力を振るった方が結局悪い」と教えられてきたのに、なぜ国という規模だとそうじゃないのか、自分が学んできたことと逆の方向に行っているような気がしました。

でも、中学でも高校でも周りには関心を持っていそうな子はいなくて、ぼんやり学校生活を過ごしていました。ニュースは見ていたけど、高校生は社会のことに関心がないのが当然なのかなという意識があって、「日本全国の高校生でこんなこと考えているのは俺だけなのかな?」って思っていました。じゃあ、自分一人でどうこうできる問題でもないし、いまの社会は変だと思うけど、もう変えたくても無理だなって。

だから、サスプル(SEALDsの前身団体)が出てきたときに、同じ世代に、同じことを考えている人いるんだ。 「もしかしたら何か起こせるかもしれない」という希望を感じました。メンバーの中には、僕と同じような人もいるし、今回の安保国会をみておかしいと思ったという人もいれば、原発事故で関心を持った人もいて、それぞれ、関心の持ち方もきっかけも違います。

だから、僕たち若い世代が、身分を明かしながら、街宣したりデモをしたりしていることにも意味があると思っています。デモも、流行りの音楽をかけながら街宣車を動かしたり、サウンドカーにはカラフルな風船を取り付けたり、かっこいい横断幕を下げたり、全員が同じ服装をするのではなくて、自分たちがすきな服装をしてきたりして。デモ隊が動いているときには、聞く側が受け取ってもらいやすいように「選挙に行こう」「民主主義ってなんだ?」って短いコールを叫ぶように工夫しています。僕たちの思想を押し付けるわけではなくて、反対でも賛成でもいいから、何してるのかなって政治に関心をもってもらうことが重要。

これまでは、政治をするのは政党なんだ、という意識が大きかったのではないかな。僕たちは新しいやり方でハードルを低くして、政治と個人の間にあった隔たり、壁を越えていこうとしている。政治っていうのは年配の方や企業の人ばっかりがやっているんではなくて、若い人たちも思うことに声をあげていいんだよって。僕たちがハードルを下げて、興味をもってもらう。そういうことがこれからの社会に大切だと思います。

政治に関心を持った結果、僕たちとは違う意見を持つかもしれない。それも別にいい。第一歩として、自分と近い存在が政治に関心を持っていることを知ってもらって、政治に興味をもったり僕たちに興味をもってもらえたら、いいと思う。それが、若者の政治参加の一つの方法だと思う。今後も、いろんな方向で、いままでの概念にとらわれない活動をしていくのが大切なのかな、って思っています。

> 後編はこちら

 

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堀江昌史

堀江昌史

1986年3月生まれ。ハードな仕事に内臓を侵され退職。現在は、半農半筆の暮らしを目指すべく琵琶湖のほとりで百姓修行中。

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