実際に現地に行って、空気を感じるシリーズ第2弾後編。前編はこちら。
鹿児島2日目。私は「霧島いわさきホテル」に泊まった。
理由はなんてこと無い。じゃらんで見たら「龍馬ゆかりの温泉」と紹介されていたからだ。
「坂本龍馬」は知っている。しかし、高杉晋作が吉田松陰の弟子だと知ったのは「花燃ゆ」を見てからだ。それだけの歴史オンチではあるが、福山雅治もとい龍馬が、真木よう子もといお龍と霧島温泉で日本初の新婚旅行をしたということは「龍馬伝」で知っていたので、その温泉がある「霧島いわさきホテル」に行くのは当然だったと言える。それにしても、「運命の人」(2012年 TBS)の真木よう子は良かった。
霧島いわさきホテルは、霧島温泉郷を上っていった最も奥にある。鹿児島空港から車で30分ほどだ。「昔は団体客が多かったんだろうな」と思わせる広さだが、使っていないスペースも多く、平日のためか九州最大級とも言える露天風呂はほぼ貸切状態だった。
感動したのはスタッフの対応だった。最初、部屋に案内してくれた若い女性は新人なのか、かなり緊張していたようで、説明を聞いているこちらまでドキドキするほどだった。それを横で見ていた先輩らしき女性(やはり若い)はニコニコしながら説明する彼女を見ていた。それだけでホテル全体の暖かな雰囲気が伝わってきたのだが、驚いたのは、他の従業員全員がすれ違うときにも実に良い笑顔で挨拶してくれたことだ。朝、風呂の脇で植木に水をやっていた年配の女性の横を通ったときも、スッと背筋を伸ばして「おはようございます」と気持ち良く挨拶してくれた。
きちんとしたホテルでは対応が良いのはむしろ当然とも言えるが、なぜかこのホテルの対応はじんわりと胸に染みてくる感じだった。リーダーらしきスタッフに「何か特別な教育はしているんですか?」と聞いてみたが、「いや、研修はやっていますけど、取り立てて特別なことはやっていないと思います」とのことだった。
部屋からは桜島が一望できるはずだったが、超絶雨男の私が来たときはモヤがかかって見えないことになっている(涙)。福山雅治と真木よう子もとい(くどい)坂本龍馬とお龍が入った温泉「緑渓湯苑」は、霧島いわさきホテルの宿泊客のみ夜に入れる(宿泊客以外は昼に開放されている)が、夜に酔っ払いすぎてしまって、申し込み時間が終わって入れなかった。レポーター失格であるが、まあいい。ひとりだったし、次回はお龍を連れて来よう。
鹿児島3日目。空港まではすぐだったので、霧島界隈をドライブでもして帰るつもりだったが、ふと「川内原発は近いのだろうか」と思い立った。
調べてみるとホテルから原発まで車で片道2時間弱。飛行機の時間まで4時間半あるので、行かれなくはなさそうだ。
ということで、行くことにした。
カーナビに頼ってひたすら川内原発に向かう。行くのは特に理由があるわけではなく、再稼働したばかりの原発周辺はどうなっているのか見ておきたいと思ったからだった。以前、仙台(シャレではない)に行ったときに、やはり突然女川原発を見ようと思い、車を走らせたが、止まっている原発は不気味だった。25年ほど前に見た浜岡原発は要塞のように感じた。川内原発はどうなのだろうか。
最近のカーナビは余計な機能がついているようで、「急発進を感知しました。安全運転を心がけましょう」「急ブレーキを感知しました」「速度超過を感知しました」「急カーブを感知しました」と、頻繁に注意してくる。頭にきて案内を止めようかと思ったが、道がわからなくなってしまうと困るので、そのままカーナビのお姉さまと会話しながら、なんとか川内原発に到着した。
まずは、その大きさに驚く。しかし、原子炉建屋のペイントがパステルカラーのため、発電所的な雰囲気は薄い。
川内原発に到着するころ、大きな煙突が見えた。「なんだろう?」と思いながら素通りしたが、そこは九州電力火力発電所だった。川内火力発電所は2機あり、それぞれ50万キロワットの出力となっている。川内原発とは、川内川を隔てておよそ1.8キロぐらいのところにある。
川内原発にも他の発電所と同様、展示館があり、原発の安全性をアピールしていた。実物大の原子炉模型があり、手元のボタンを押すと臨界のようすがわかるようになっている。チェルノブイリや福島の事故を紹介しながら、川内原発での安全対策をアピールしていた。地元の住民は、これを見て安心するのかもしれない。
原発の入り口は、数人の警備員が出て入退出者をチェックしていた。思ったよりも緩い感じで、周辺からドローンを飛ばして敷地内を撮影できそうな感じもしたが、いたるところに監視カメラがあって、不審な動きをすれば速攻で警備員が駆けつける仕組みになっているかもしれない(そう願いたい)。
30分ほど展示館に滞在し、空港に向かうことにしたが、すぐに巨大な羽を見つけた。複数あり、ひと目で風力発電だとわかるものだった。
これらは薩摩川内市の隣りに位置する「いちき串木野市」にあるもので、株式会社ウイングランド設置による1基は1,500キロワット、九電工新エネルギー株式会社設置の20機が2,000キロワットの出力(総出力2万キロワット)で売電事業を行っている。この他薩摩川内市(旧上甑町)の上甑島にも株式会社柳山ウインドファームによる2,300キロワットの風力発電設備が12基設置されている。
つまりこのあたりは、火力発電、原子力発電、そして風力発電と3種類の発電設備があることになる。風力発電は発電規模こそ小さいが、設置時期は東北の震災以降なので、今後の発電事業を見込んで設置されたものだろう。
帰りの飛行機にはなんとか間に合い、空港で黒豚カツカレーを3分で平らげて飛行機に飛び乗った。
今回、鹿児島に行く前にどうしても知覧特攻平和会館には行こうと決めていたが、奇しくも川内原発を目の当たりにして、電力政策についても考えることができた。もちろん、表向きには安全対策が認められての再稼働ということだが、本当に必要性があるのかどうか、安全性は担保されているのか、まだまだ調べなければわからないことは多い。
地元では、やはり原発賛成派と反対派がいるようで、車を走らせているときにそれぞれの立て看板を見かけた。川内市議会は昨年(2014年)10月に再稼働に賛成する陳情を賛成多数で可決している。岩切秀雄薩摩川内市長は「苦渋の決断」としながらも、再稼働に同意し、鹿児島県議会も同意して川内原発は再稼働となった。
薩摩川内市では来年(2016年)の10月に、市長選挙と市議会議員選挙が行われる予定だ。
薩摩川内市町選挙(2012年)
薩摩川内市議会議員選挙(2012年)
薩摩川内市に行くと、桜島は遠くにある島に思える。しかし、現在(2015年11月23日)入山規制中の桜島の降灰は鹿児島県外にも及ぶことが多く、噴火の影響も考えられる。「いざというとき」に誰が責任持つのか。地元の有権者も再稼働に同意しているのか。
今後、次々と再稼働されていく原発の立地自治体は、経済的な理由で再稼働を容認したとしても、いざというときはその周辺の自治体にも影響が及び、最悪の場合は日本の半分もしくは全部に人が住めなくなるかもしれないことを国民は学んだはずだった。
きっと次の大きな事故が起きない限り、日本人は原発の再稼働を進めていき、次の大事故が起きたときは、福島よりもかなり広範囲に人が住めなくなるのかもしれない。そこで初めて気がついても遅いのだ。
そういえば、大飯原発再稼動のときに、「これからどんどん再稼働になるのかな?」という私の問いにある国会議員が言っていた。
「大丈夫だよ。もう簡単に再稼働できないようになっているから、実際はほとんど再稼働しないままいくでしょう」
そんなに楽観視していられなくなっていると思うのだが。
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