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“純粋に”選挙を楽しむ!投票はできないけど大阪ダブル選挙全候補者を追いかけてみた【後編】

2015/11/28

宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

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タイムテーブルかぶり問題〜グリーンデイかシガーロスか

鶴橋を出たのが15:30頃、次なる選択肢は16:15から大阪市南エリアで高尾候補の街頭演説と、17:00から天王寺での橋下市長の演説。高尾氏のような候補者についてはメディアで取り上げられることも少なく、その選挙活動スタイルやビラなどの印刷物を抑えておきたい気持ちがある一方で、今回で引退を表明しており、橋下氏の本選挙戦最後となる単独の演説に聴衆がどんな反応を示すかも見ておきたい気持ちの板ばさみになる。

野外ロックフェスに行くとタイムテーブル上で見たいミュージシャン複数組が同時刻別ステージで演奏する際、断腸の思いでどちらかに決める時の思いに似ている。結局、鶴橋から大阪市南エリアまでは若干距離があり、その後の計画のことも考慮に入れて橋下氏の現場に向かうことにした。

橋下市長〜カリスマの貫禄

今回のダブル選挙に橋下氏は出馬していないのだが、天王寺ミオに集まった聴衆は今回のウォッチング旅行でこれまでに見た2候補のものとは比較にならないほどの熱気に包まれていた。歩道の通行を一部制限してあふれんばかりの人たちが待ち構える中に颯爽と現れた橋下氏。

演説の内容は、無駄を削減して改革を推し進めてきたので、既得権をもつ人たちに疎まれてきたが、引き続き改革を進めたいので応援してほしい、といったような内容で、持ち前の話術で聴衆を引き込んだ。「がんばれ!」「そうだ!」といった合いの手は維新のスタッフと思われるジャケットを着たひとたちからしか飛んでいなかったので、「熱狂」と呼ぶまでには至らないものの、関心をひきつけ、最後まで聞かせる演説をしていたように見えた。

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橋下氏の最後の応援演説

中川候補〜独自の戦いに遭遇

天王寺を後にして、2大陣営が「最後のお願い」を予定している梅田、なんばに立ち寄る前に、「梅田地下街などにいる」というヒントを頼りに中川暢三市長候補を探しはじめた。そもそも梅田と難波の位置関係もあやふやで、見つけることができるか不安だったものの、地下街に入って5分くらいで発見できた。出会えた興奮のあまり握手を求めると、候補者よりさきに着ぐるみのネコが握手を求めてきてしまうハプニングも。

本人より人気で多くの人がネコに握手を求めるのだろうが、主役を差し置いて前に出てしまった気まずさは着ぐるみ越しに伝わってきた。立ち止まって彼の話を聞いている人はおらず、少し離れたところで座り込んでパソコンを操作している新聞記者とおぼしき人がいるだけだった。そんな状況を理解してか、話している内容は「真ん中をまっすぐ流れるきれいな川、中川をよろしくお願いします」「知事と市長は別々に選んでください」「確かな実績と経営手腕のある中川を」の3つくらいのフレーズを繰り返していた。政治活動歴の長さゆえか、流れ行く人波の中で効果的に訴えることを熟知している様子がうかがいしれる。

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中川暢三市長候補と着ぐるみの「たまちゃん」

「最後のお願い」の比較

公職選挙法で街頭演説ができるのは投票日前日の午後8時までと定められているため、午後7時ころからの選挙戦最後の演説は「最後のお願い」あるいは「マイク納め」と呼ばれ、選挙戦の集大成として、できる限り広い場所で多くの聴衆を動員して盛り上げるのが選挙の定石となっている。今回、自民党を中心とした反維新陣営は梅田ヨドバシカメラ前を、維新陣営は難波の高島屋前をその場所に選んだ。どちらも午後7時から午後8時までという時間で設定していたため、また翌日からの仕事に備えて早めに東京に戻りたいという個人的な事情もあり、双方の演説内容をゆっくりと聞くことはできなかったが、オーディエンスの様子を中心に、栗原・柳本(反維新)陣営→松井・吉村(維新)陣営の順に各15分程度観察した。

演説開始予定時刻が近づくと、陣営スタッフと思しき人たちが標識ロープで歩道上の聴衆と通行者を分けて誘導する必要があるくらいには人が集まっていた。洗練されたデザインの英語で主張が書いてあるプラカードを掲げる人や、自説をひとりごとながらスマートフォンでネット中継しているらしき人など、反差別デモや安保法反対デモで見かけたタイプの人たちが、自民党推薦で、公式サイトのトップページで安倍首相と握手している候補者を必死で応援している姿に戸惑ったものの、それぞれに鶴橋で話した共産党のおばあさんと同じように複雑な思いを抱えながら街頭に出ていることに思いが及んだ。

また、この陣営の運動で目に付いたのが、文字が記されていない単色のノボリを掲げていたことだ。青は柳本氏、ピンクは栗原氏のイメージカラーとして今回使われていたので、それぞれのアピール効果を狙いつつ、候補者名を明記しないで公選法に抵触しないようにする知恵だと思われる。

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栗原・柳本カラーののぼり旗

早々に切り上げて、地下鉄に乗り10分少々先の難波に向かう。橋下徹現大阪市長、松井一郎大阪府知事(候補)、吉村洋文大阪市長候補が揃い踏みで話すなんば高島屋が今回の旅の最終目的地となった。時間差も加味しなくてはならないが、目測では軽く自民党推薦2氏の3倍近い人数で溢れており、スタッフが配るビラを受け取ってもらえている率もかなり高い。そればかりか、かなり若い世代の人複数が手渡されたビラをその場でじっくり読んでいる、という選挙の現場ではなかなか見られない現象が起きており、関心の高さに驚いた。

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あふれかえる大阪維新候補のマイク納め

もともと情勢調査などである程度結果は見えていたものの、このように現場を周って状況を観察し、時には人と話してみることで選挙結果だけでなく、その街やそこに住む人の生き様が見えてくる。知事候補の美馬氏に会えなかったことや、西成区の府議補選が見られなかったことは心残りではあるが、全てを見られないなりに最大限巡り尽くすのがこの趣味の醍醐味だと思って納得するしかない。

読者の皆さんもぜひ関心のある選挙があったらその現場に足を運んで「選挙戦」を体感してみることをお勧めしたい。

 

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宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

選挙ライター、キュレーター(現代美術)。 1983年東京都出身。中学生時代から衆参の選挙の度に全選挙区の当落予想を続ける。ポスターデザイン、インディーズ候補、政見放送、選挙公報、街頭演説など選挙に関わること一切が関心領域。著書に『沖縄〈泡沫候補〉バトルロイヤル』(ボーダーインク)がある。

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